高級チョコレートブランド「ゴディバ」を日本で展開するゴディバジャパンをめぐり、経営不振が相次いで報じられている。スポンサーの支援を受けて再建に乗り出し、リストラ策も検討しているとされた一方、同社のジェローム・シュシャン社長は報道を真っ向から否定した。ただ、多額のシンジケートローンを抱え、その返済期限を延長したことは事実だ。「高級チョコ」の代名詞として成長してきたゴディバに、いったい何が起きているのか。「コンビニ展開でブランドを安売りしたから」は本当なのか発端となったのは、ブルームバーグが6月に報じたゴディバジャパンの借入金問題だった。記事では、ゴディバジャパンは経営不振に陥っているとし、約750億円の借入金について、2026年6月末だった返済期限の延長を銀行団と協議しているとなっている。その後、9か月延長することで合意したことも伝えられた。ゴディバジャパンは2019年、アジア系投資ファンドのMBKパートナーズ傘下となった。MBKによる買収額は1000億円超とされ、買収では銀行借り入れを活用し、報道によれば25年12月末時点でも約750億円の借入金が残っていた。さらに、カカオ豆価格の記録的な高騰や人件費の上昇、借入金の利払いなどが経営を圧迫し、スポンサーの選定やリストラ策、店舗戦略の見直し、人員配置転換などが検討されているとも報じられた。こうした報道を受け、SNS上では、大衆化路線が経営不振の原因になったとみる声が続出した。実際、ゴディバはスーパーやコンビニへ販路を広げ、さらに「GODIVACafe」「GODIVAdessert」「ゴディパン」「ゴディバクレープ」などの新業態も相次いで展開している。しかし、本当に大衆化路線が原因という単純な図式なのだろうか。社長は「経営不振」を否定 それでも多額の赤字が続く一連の報道を受け、ゴディバジャパンは6月末に声明を発表。返済期限の延長は事実だとした一方、事業は「引き続きプラスのキャッシュ・フローを創出しており、EBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)についても堅調な水準を維持しております」とし、「今回の件による事業への影響はありません」と強調した。また、シュシャン社長は26年8月8日配信の「現代ビジネス」の記事「『ゴディバ経営不振報道』は真実なのか...日本法人社長が初めて明かした"リアルな経営実態"」で、発端となったブルームバーグの記事について、日本語版のタイトルには英語版になかった「経営不振」という言葉が加えられていたと指摘。閉店や人員削減についても、「経営していく中で、閉店する店舗がないわけではありません。しかし経営不振が理由ではありません。リストラの計画もまったくありません」と完全否定した。実際、ゴディバジャパンの売り上げは大きく落ち込んでいるわけではない。非上場企業のため詳細な業績は公表されていないが、企業情報検索サービス「FUMA」のデータによると、コロナ禍で大きく落ち込んだ売上高はその後回復し、22年12月期が約460億円、23年12月期が約470億円、24年12月期が約460億円、25年12月期が約450億円と、多少の波はあれど堅調に推移している。一方で、純利益は毎年マイナスで、約60億~90億円の赤字が続いていた。売り上げは一定水準を保っているのに、多額の赤字が出てしまう。カカオ豆をはじめとした原材料価格や人件費の上昇に加え、巨額の借入金に伴う利払い負担などが収益を圧迫していると考えられる。つまり、チョコレートは売れている。それでも利益を残せない構造が問題なのだ。コールド・ストーンは悪夢のような失速 クリスピー・クリームは復活の前例にゴディバの現状から思い出されるのが、海外発スイーツブランドの栄枯盛衰だ。2005年に日本上陸した「コールド・ストーン・クリーマリー」。店員が歌いながらアイスクリームを作るスタイルで大行列を生み、最盛期には全国34店舗まで拡大した。しかし店舗は急減し、一時は「国内に1店舗のみ」という状況に至った。2006年に日本へ進出した「クリスピー・クリーム・ドーナツ」も、ピーク時の64店舗から大量閉店を経験した。しかし、都市部への出店集中、日本市場に合わせた商品開発、オフィス街への進出、テイクアウト専門店の増設などを進め、2025年末の時点で全国89店舗までV字回復した。ゴディバは売上高が大きく崩れていない以上、コールド・ストーンのような「ブーム終焉」とは事情が異なる。しかし、利益を出せない状態が続けば、ブランド力の維持が難しくなり、衰退していく恐れは十分にある。一方、大量閉店から持ち直したクリスピー・クリーム・ドーナツの例が示すように、知名度の高いブランドには再浮上する余地もある。赤字続きとなっているゴディバは、どのように業績の改善を目指すのか。原材料高という逆風に加え、750億円規模の借入金を抱えるだけに、その答えを出すまでの猶予期間は決して長くなさそうだ。
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