イヤホンの歴史 5(最終回) カスタムIEMの普及と最新イヤホンのトレンド

シェルだけでなく音質もカスタマイズできるカスタムIEMが登場

    さらに日本から、2014年に全く新しい思想のカスタムIEMが発表され、2015年から発売が開始されます。それが「Just ear」です。ソニーのもつブラントとしてはかなり特殊な存在となっているこのJust earは、補聴器技術を生かした正確な耳型採取によって良質なサウンドと高い装着性を確保する、"テイラーメイド"を掲げているのが特徴です。

Just earのデザイン的な特徴ともいえる、ゴールドの金属部分は13.5mmのダイナミックドライバー。この大口径のドライバーによる迫力ある低音と、BA型ドライバーによる繊細な中音域を表現するハイブリッド構造となっている。
Just earのデザイン的な特徴ともいえる、ゴールドの金属部分は13.5mmのダイナミックドライバー。この大口径のドライバーによる迫力ある低音と、BA型ドライバーによる繊細な中音域を表現するハイブリッド構造となっている。
写真はJust earをオーダーした際にひとりひとり採取される耳型。補聴器の高度な技術を生かした耳型採取ができる、東京ヒアリングケアセンターで行われている。
写真はJust earをオーダーした際にひとりひとり採取される耳型。補聴器の高度な技術を生かした耳型採取ができる、東京ヒアリングケアセンターで行われている。

    それにも増して、唯一無二の物づくりといえるのが、音のプロフェッショナルの手を借りて自分好みのサウンドまで作り上げることができる"サウンドもオーダーメイド"であるということです。そのため、Just earの音質調整モデルである「XJE-MH1」のオーダー時は、耳型を作るだけでなく、サウンドキャラクターについてもユーザーの好みに合わせて調整ができます。

    音の調整にはソニーで名だたる製品を作り上げてきたイヤホン開発者が音質コンサルタントとして、ユーザーと1対1で調整を行うといった、これまでに想像できなかった体制を整えています。本当の意味で、この世にたったひとつしかないスペシャルなイヤホンを作り上げることができるのです。

2015年に究極のパーソナルオーディオを目指して、Just earを事業化した音響設計のプロフェッショナルであるソニーの松尾伴大氏。音質コンサルタントとして、購入者一人ひとりと向き合って音質を調整してきた。現在は、3人体制でJust earの音質調整は行われている。
2015年に究極のパーソナルオーディオを目指して、Just earを事業化した音響設計のプロフェッショナルであるソニーの松尾伴大氏。音質コンサルタントとして、購入者一人ひとりと向き合って音質を調整してきた。現在は、3人体制でJust earの音質調整は行われている。

    耳型や好みの音質の情報は、大分県にあるソニーの工場である「ソニー・太陽」に送られ、ひとつひとつ手作りで生産されます。ソニー・太陽は、ソニーのマイクロフォンの基幹工場であり、MDR-CD900STやMDR-EX800STといったプロ用モニターヘッドホンなど、熟練の技術者による高い信頼性がある工場です。

今年で4周年を迎えるJust earは、ミュージシャンのLiSAさんとのコラボレーションモデル「XJE-MHL1SA」を販売するなど、様々な展開で話題を呼んでいる。
今年で4周年を迎えるJust earは、ミュージシャンのLiSAさんとのコラボレーションモデル「XJE-MHL1SA」を販売するなど、様々な展開で話題を呼んでいる。

    このように、カスタムIEMは日本国内での耳型採取や生産も確立し、安心してオーダーできるようになりました。このジャンルがイヤホンジャンルにおける最前線のひとつであることは確かで、ここから次なる潮流が生み出されることになるかもしれません。そういった意味で、今後もカスタムIEMは見逃せない存在といえるでしょう。

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