イヤホンの歴史 5(最終回) カスタムIEMの普及と最新イヤホンのトレンド

フルワイヤレスイヤホンの新潮流

    また、カスタムIEMをBluetoothワイヤレス化、しかもフルワイヤレス化できる製品も登場してきました。FOSTEX「TM2」は耳掛け型の本体を持つユニークなデザインのフルワイヤレスイヤホンですが、イヤホンと本体を接続するアダプタ部分が取り外せるうえ、オプションとしてFitEar用と、カスタムIEMによく使われている2pin用のアダプタがオプションとして用意されています。こちらを利用することで、手持ちのカスタムIEMを手軽にBluetoothワイヤレス化することができるのです。使い勝手の良さから、カスタムIEMのBluetoothワイヤレス化は多くの人が注目しています。このように、Bluetoothワイヤレス、なかでもフルワイヤレスイヤホンがひとつのメインジャンルのひとつとなっていくのは確実でしょう。

   

FOSTEXの「TM2」は単体でフルワイヤレスイヤホンとして使えるだけでなく、ケーブル交換式のイヤホンやカスタムIEMに付け替えて使える画期的なアイテムだ。
FOSTEXの「TM2」は単体でフルワイヤレスイヤホンとして使えるだけでなく、ケーブル交換式のイヤホンやカスタムIEMに付け替えて使える画期的なアイテムだ。

    さらにもうひとつ、「ノイズキャンセリング」についても、最新イヤホンにおいて注目キーワードのひとつとなっています。これは一部のヘッドホンに採用されていた技術で、マイクで周囲の騒音を取り込んで、それを相殺する音を発生させ、とても静かなリスニング環境を提供してくれます。そのノイズキャンセリング機能が、最新の高性能化、高集積化によって、ソニー「WF-1000XM3」などのフルワイヤレスイヤホンにも搭載されるようになりました。また、ノイズキャンセリング機能の調整をスマートフォン用アプリから行うなど、Bluetoothワイヤレスイヤホンは、スマートフォンとの連携も押し進められつつあります。

写真は2019年発売のソニーのフルワイヤレス&ノイズキャンセリングイヤホン「WF-1000XM3」。1995年以来、ノイズキャンセリングのイヤホンやヘッドホンを多数開発してきたソニーならではの商品といえる。
写真は2019年発売のソニーのワイヤレスノイズキャンセリングステレオヘッドセット「WF-1000XM3」。1995年以来、ノイズキャンセリングのイヤホンやヘッドホンを多数開発してきたソニーならではの商品といえる。

    元々は1880年代に電話交換手のレシーバーとして誕生したヘッドホン。ソニーのウォークマンが生み出したポータブルオーディオというカルチャーによって、ヘッドホンもイヤホンも劇的に進化しました。Just earのように、自分の耳型に合うだけでなく、音質も自分好みにできるイヤホンも登場し、ますます一人ひとりの生活に欠かすことのできない存在となっていくでしょう。
    イヤホンとヘッドホンは、電化製品としては、新しいジャンルであり、その時代ごとの最新技術、文化的な流行と密接に関係し、進化のペースがとても早いのも特徴となっています。今後はさらに様々なタイプの製品が登場してくるはずです。皆さんも是非、イヤホンとヘッドホンの最新動向はこまめにチェックしてみてください。


【筆者プロフィール】
野村ケンジ(のむら・けんじ)
ヘッドホンやカーオーディオ、ホームオーディオなどの記事をメインに、オーディオ系専門誌やモノ誌、WEB媒体などで活躍するAVライター。なかでもヘッドホン&イヤホンに関しては造詣が深く、実際に年間300モデル以上の製品を10年以上にわたって試聴し続けている。また、TBSテレビ開運音楽堂「KAIUNセレクト」コーナーにアドバイザーとしてレギュラー出演したり、レインボータウンFMの月イチ番組「かをる★のミュージックどん丼792」のコーナー・パーソナリティを務めたりするなど、幅広いメディアに渡って活躍をしている。


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