規制は「持てる者の惰眠」と「持たざる者の絶望」をもたらす

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   先日、テレビ朝日「サンデープロジェクト」の選挙特集にゲスト出演し、雇用の規制緩和(要するに正社員の一定の賃下げとリストラを認めること)が必要だと話をした時のこと。いろいろ各党の方々の話を聞いていて、雇用の大原則を理解していない政党が多いことに驚かされた。

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規制が「クビ切り」を増やすことを理解しない政党

   その大原則とは「規制によって、人件費の総額は増やせない」というものだ。たとえば、一人500万円の給料を10人の社員に払っている会社に「社員のお給料を1割引き上げなさい!」と命じることは可能だが、総額は増やせない以上、550万円の給料で9人雇うことになるだけである。つまり、予算オーバーな分はクビ切りで帳尻を合わせるわけだ。

   ちなみに、「最低賃金1000円に引き上げ」という政策も同じで、グローバリゼーションが進んだ現在、頑張って生産性を向上させようと努力する企業より、中国に発注する企業の方が多いと思われる。

   アメリカのニューディール政策時に最低賃金の引き上げが行なわれているのは確かだが、それは雇用流動化の進んだアメリカだから「高給取りの賃金を削って消費性向の高い庶民に回す」という効果が期待できるのであって、日本でやっても悪い面しか出ないだろう。

   つまり、再分配というのは、結局は正社員全体を含めた中で進めるしかなく、それには労働市場の流動化しかありえないということだ。最低賃金の引き上げは、やるとしても流動化が一定程度浸透し、さらに景気が良い時期を選ぶべきだ。

規制からは「夢」も「希望」も生まれない

   「不況だからこそ改革の手を緩めるべきではない」というような話はごくごく基本的なことであり、実を言うと本音では(共産党を除く)各党とも理解はしていると思われる。少なくとも、3割の交付金カットを4割の人員カットでしのいだ社民党は、実体験として理解しているはずだ。現にそれによって党は生き延び、連立政権入りも視野に入ってきたのだから、流動化のルールとセーフティネット作りの議論を呼びかけろといいたい。

   そろそろ本音と建前を使い分けるのはやめにしよう。

   番組の中では触れられなかったが、「成長のビジョンをどう描くか」という最大の難問に対する答えも、恐らくその先にある。

「規制では夢も希望も生まれない。持てる者に惰眠を、持たざる者に絶望をもたらすだけだ」

   日本型雇用という身分制が崩れ、誰もが今の場所に止まるために努力するようになった時。あるいは、もっとも能力のあるグループが大企業や官庁を目指さなくなった時。日本中の組織で新陳代謝が進み、経済は新たな成長に転じるに違いない。

城 繁幸

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人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。ブログ:Joe's Labo
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