就職活動といえば「面接対策」と「自己分析」が定番だが、ネット上では「自己分析は意味がない」という意見も見受けられる。自己分析には、どういう意味があり、就職活動においてなぜ必要とされるものなのだろうか。
「最も力を入れること」の1位だが「無駄だった」という声も
ネット調査会社のネットマイルは2009年12月1日、「就職活動についてのアンケート」の結果を発表した。回答者は、就職活動中の学生379人。それによると、「今後就職活動をしていく中で、あなたが最も力を入れようと思っていることは?」という質問には、男女総合では「自己分析」と「面接対策」が19.5%で同率1位だった。
男女別では、男性では「面接対策」(22.5%)、女性では「自己分析」(21.8%)がそれぞれ1位、文系・理系別では、文系が「自己分析」(20.1%)、理系が「面接対策」(22.9%)が1位だった。専門性が明確な理系よりも、文系の方が「自分は何がしたいのか、何が強みか弱みなのか」を整理するのに手間が必要なのかもしれない。
一方、2ちゃんねるの「就活でして良かった事&無駄だった事」というスレッドには、無駄だったこととして「自己分析」を挙げる回答が目に付いた。「ありのままの自分で突撃した。意外といい成果出るよ」という意見もあった。あらかじめ準備したきれいな答えよりも、その場で考えた率直な答えの方が好感を持たれたということか。
自己分析とは「自己PR」のための「事実の整理」ではない
就活対策には「自己分析」が定番になっているが、就活を終えて振り返ったときに、あまり意味がなかったと感じる人がいるのは確かなようだ。なぜこのような感想を抱いてしまうのか。キャリア教育プロデューサーの新田龍氏は、「自己分析を無駄だと思った人は、やり方を間違っていたのかもしれない」と指摘する。
「自己分析は、まず自分がやってきた『事実』の整理から始めますが、この段階で作業を終わらせてしまい、『私はこういうことをやってきました!』という自己PRに走ってしまう人が少なくない。しかし会社が聞きたいのは、何をやったかだけでなく、その裏にある『どうやったか』ということであり、そのための分析が必要なのです」
つまり、あなたは何をやって、うまくいかなかったり壁に当たったりしたときに、どう反応したのか。会社は、事実の奥に潜む「思考様式」や「行動様式」「価値観」を見ようとしているのだという。まだ専門性が培われていない学生を雇う会社にとっては、職種への適性とともに、そのような「素養」が重要になるのだろう。
分析に足る行動をしてきた人であれば、その都度反省して学習していくし、言葉にもできる。「就職活動のための自己分析は必要ない」という人は、正しい自己分析を行わなかったために無駄としか感じられなかった人と、普段からしていたために改めて必要なかった人の2種類に分けられるのかもしれない。