自民党・谷垣総裁の「新刊企画」を勝手に考える

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   最近、気になっていることがある。谷垣禎一・自由民主党総裁の存在感の無さだ。選挙を前にしてこれはまずい。別に自民党の肩を持つわけではないけども、民主党が予想を上回る超絶グダグダぶりなので、対抗馬としてちょっとはプレッシャーを与えてもらわないと困るのだ。

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過去の政治家たちはここ一番で本を出してきた

   まず、なんといっても総裁には華がない。工場の総務課長なんかにいそうな感じで、粗品の配布とかアンケート回収とかは得意そうだが、リーダーシップとかは全然期待できそうな感じがしない。実際、国会質問で味方から野次られて「えへへ」と頭をかいている姿をみると、純粋に向いてないんだろうなと思う。

   だが、本人にオーラがないといっても、他に存在感をアピールする方法はある。それは活字だ。実際、キーパーソン的政治家というのは、ここ一番の勝負に際し、必ず文章で所信表明を行うものだ。とりあえず、谷垣さんは所信表明代わりに本でも出してみてはどうか。

   ところで、ほとんどの政治家本はいくつかのパターンに分けられる。

A.分かりやすく、叩いても国民から反発を買わない敵を設定している
B.読者に痛みを求めず、今のままの日本でいいんですよ、と安心させてくれる
C.玉虫色で、どうとでもとれる
D.一般人は度外視の信者向けリップサービス

   中川秀直氏の『官僚国家の崩壊』は、典型的なAタイプだ。東大卒で政官財に居座るエリート層を「ステルス複合体」と名付け、敵として前面に押し出している。実際には彼らエリートではなくシステム自体が問題なのだけど、東大卒というと分かりやすいし数も多くないから票に響かない。渡辺喜美氏の本も、敵が官僚と日銀に変わる点を除けば、立ち位置は非常に近い。

   安倍晋三氏の『美しい国へ』は、AとBのミックスだ。戦後体制という分かりやすい閉塞感の原因を示しはしたが、美しい国という耳触りは良いが抽象的なビジョンを示すことで、既得権にメスを入れる痛みのイメージを遠ざけた。

タイトルは『みんなで美しい国にしようぜ』

   最近出された舛添要一氏の『内閣総理大臣 増補版』は、典型的なCタイプだ。族議員をターゲットとしつつ、日本的良さと小さな政府路線を混ぜこぜにしていて、八方受けを狙っているのが良く分かる。

   共産党や社民党といった政党の関係者が出す本は、ほぼDタイプに該当するが、高齢の信者からお布施を巻き上げるためのダイレクトメールみたいなものなので、最初から彼らが喜ぶようなことしか書いていない。

   そういう意味では、昨2009年、月刊誌に発表された鳩山首相の『私の政治哲学』がもっとも構成が練られていたように思う。「行き過ぎた資本主義」という何だかよくわからないけど悪そうで、しかも規制大国の日本とは全然関係ないターゲットを設定することでAをクリアしつつ、「いのち」とか「友愛」といった島国根性を刺激するフレーズでBをも取り込んでいる。ここまで見事にAとBを両立させた論文は珍しい。

   要するに、誰が読んでも分かりやすく、顧客満足度を高めてくれるような本というわけだ。谷垣さんがインパクトでこれを上回るには、AからCまでを網羅した本で勝負をかけるしかない。というわけで、こんな目次立てはどうだろう。

『みんなで美しい国にしようぜ』
第1章 北朝鮮の脅威
第2章 内なる脅威、日教組
第3章 とてつもなく美しい日本
第4章 政府は大きすぎも小さすぎもよくない

   意外と売れるのではないか。いや、僕は読みたいと思わないけど。

城 繁幸

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人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。ブログ:Joe's Labo
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