社員を休ませないと業績悪化? 成長企業に潜む「加速のワナ」

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   「会社といつでも連絡が取れるよう、携帯電話の電源は常に入っているか」――。イエスと答える社員が多い会社は、従業員を疲弊させ、企業業績がいずれ悪化すると指摘する論文が話題になっている。

   月刊誌「ハーバード・ビジネス・レビュー」(日本版)2010年12月号に掲載された「社員を追い詰める『加速の罠』」。スイスの経営学者らが会社のリスク回避のために、社員に「休息期間」を取得させる必要性を説く。

「早い退社に罪悪感」そんな職場は危ない

社員を追い立ててばかりでは成長できない
社員を追い立ててばかりでは成長できない

   論文によれば、企業は市場からの強い圧力を受けると、事業の数を増やしたり、業績目標を高くしたりしながら、ビジネスの「スピード」を上げて、実力不相応なことに挑戦する傾向があるという。

   これにより、業績は一時的に向上するが、行き過ぎた「スピード重視の文化」を継続的に進めていると、やがて従業員のエネルギーを消耗させ、やる気を奪い、ひいては企業業績の悪化を招いてしまうというわけだ。

   このような「加速の罠」に陥らないために、企業は戦略を明確にして不急不要の仕事を中止したり、高すぎる目標の設定を認めなかったり、休息期間を導入したりする措置をとることが不可欠だという。論文には、

「社員は早く退社することに罪悪感を抱いているか」
「自分たちの仕事量がどれだけ多いかについて、よく話題になるか」
「多忙であることが評価されるか」
「eメールには数分以内に返信して当たり前という考え方があるか」

など16の質問項目が挙げられており、「はい」の数が9つ以上なら、その会社は「加速の罠」に陥っている可能性が極めて高い。

   「会社は結果よりも目に見える厳しい努力を重視するか」「正式な中止を皆が恐れ、体面を繕うような形で行われているプロジェクトはあるか」などの項目には、心当たりのある人もいるのではないか。

   この論文の視点を基に、給与と企業クチコミ会員サイトの「キャリコネ」が、登録会員を対象にアンケートを実施したところ、「はい」と9つ以上答えた人の割合は、回答者の12.4%となった。

社員の「疲弊退職」見越したような職場も

   さらに「はい」の数で「組織の加速度」を3つにグループ分けしたところ、「疲弊感がある」と答えた人は、加速度が低いCグループでは72.8%だったのに対し、最も高いAグループで96.8%にものぼった。

   また、「働きがいを感じている」と答えた人は、Cグループの35.3%に対し、Aグループでは16.1%と半減。組織の加速度が、従業員の働きがいを低下させ、疲弊感を増加させていることを裏付けた結果となった。

   回答者からは、過酷な勤務実態が寄せられている。ある外資系コンサルティング会社に勤務していた30代前半の男性社員Aさんは、仕事で新婚旅行の延期を余儀なくされた。

「プロジェクトの終了日を見越して、妻に頼んで結婚式と新婚旅行の時期を決めました。なのに終了間際になって、上司から『プロジェクトは成功したが、問題も見つかった』と継続を申し渡され、予定していた旅行をキャンセルせざるをえなくなりました」

   結局、延期した新婚旅行も、再び仕事でキャンセルに。怒り心頭に達した妻を見て、A氏は退職を決意した。

   できる人は極限まで忙しく、できない人は仕事を干されて追い出される組織文化。真夜中でも上司から電話が掛かってきて、気が休まる暇もない。

   800万円超の給与と引き換えに、月160時間の残業が続き、親しい同僚はウツ病で退職した。社員の入れ替わりを前提としたような激務を聞くと、「加速の罠」のさらに上を行く会社もあるように思える。

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