ビジネス書ばかり読んでいても、デキる人には絶対になれない

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   人の能力向上や成功の方法を説く「自己啓発書」市場は、2000年以降の出版不況にあって異様な活況を呈してきた。「自己啓発書が大好き」「ビジネス書を年に何十冊読んでいる」と嬉々として明かす人もいる。

   フリーライターの漆原直行氏は、このような人たちに「年収は上がりましたか?」「夢が具現化しましたか?」と問いかける。そして、ビジネス書はしょせん「一時的に血糖値を上げる栄養ドリンクのようなもの」であり、一瞬の高揚感、万能感の中毒症状に陥っている人は痛々しい、と注意を喚起する。

迷える読者をカモにする著者に踊らされるな

漆原直行著『ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない』
漆原直行著『ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない』

――何をもって幸せと感じるか、自分にとっての成功とは何か、といったことは、他人に規定されるような事項ではありません。

   冷静な視点を持って、誰かの助言や事例を参考にする。そのうえで幸せを、成功を自分なりに測ってみる。そして行動してみる…というのはよいことですし、必要なことでしょう。

   その際、過剰な煽りやハッタリに踊らされる必要はまったくなく、漠然とした危機感を覚えたり、自分を卑下したりするいわれもないのです。

   また、効率を最大化して最短距離でゴールに到達する、といった考え方に縛られるあまり、極端に失敗を恐れたり、小賢しい言い訳で誤魔化そうとしたりすることに意識が向いてしまうのもバカげています。

   もしビジネス書を読んでそんな意識になってしまっているなら、一度本を閉じてみてください。なんなら、しばらくビジネス書から距離を置いてみるのも悪くありません。

   読者の心理を巧妙にくすぐり、煽ることでカモにするような醜悪なビジネス書もあります。

「なるほど、究極の自己啓発、究極の成功は、自分が自己啓発書や成功本の著者になってしまうことなのね」

と皮肉をいいたくなるほど、迷える読者をカモにしながら磐石の地位を築いている、クレバーな著者もいないわけではないのですから。

   …ビジネス書に中途半端に感化される前に、会社や取引先など自分の身近で関わる人たちから学べることはたくさんあるはず。また、何気ない日常生活のなかにも、人として気を配らなければいけない要点に気づかされる機会は数多く存在します。

   ビジネス書を使いこなすのではなく、ビジネス書に使われるような読み方から、そろそろ卒業しましょう。ビジネス書に無闇に踊らされるのは、もうたくさんです。

   ビジネス書ばかり読んでいても、デキる人には絶対になれません――

(漆原直行著『ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない』マイナビ新書、248~254頁より)


(会社ウォッチ編集部のひとこと)

   本書には、ゼロ年代のビジネス書の総括から、出版業界の裏側、振り回される読者の実態などが詳しく書かれている。特に「自己啓発書・成功本における定番ストーリー解読」はよくできており、この手の本がいかに「お約束のストーリー」をなぞって量産されているかがわかる。読者が中毒になるのも、このような予定調和をなぞっているからだと気づかされる。

   読者をカモにして、自分だけのし上がろうとするビジネス書作家たちへの批判は厳しい。とはいえ批判一辺倒ではなく、ビジネス書との賢い距離のとり方や、古典ビジネス書のエッセンスもまとめられている。日々苦悩しながら頑張っているサラリーマンへの愛が感じられる本だ。

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