後任の営業マンにクレーム続出 案件の「引き継ぎ」は難しい

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   営業マンとの関係づくりは難しい、と感じる経験がありました。以前も紹介した地域情報誌の優秀な営業マンA氏が、急に異動になりました。苦戦中の新規拡大エリアの責任者に抜擢されたとのこと。腕を買われての栄転人事です。

   「引継ぎはきっちりしておきますので、ご心配なく」との彼の言葉を信じて、後任の訪問を待ちました。実はひと月ほど前、A氏の働きぶりに感心し、私も関わる地域の「食」の街おこしについて協力を仰いだのです。

   彼は「ぜひ力にならせてください。本社にもかけあって、できる限りの御協力をさせていただきます」と目を輝かせてやる気まんまん。まずは5~6ページのタイアップでもやりましょうか、と意気込んでいました。

事情を説明しても「もっと感謝されてもいい」

感じのいい営業マンはなぜ「ブラック化」した?
感じのいい営業マンはなぜ「ブラック化」した?

   後任のB氏も、決して感じの悪くない営業マンでした。しかし、タイアップの話になると、どうも歯切れが悪い。念のため経緯説明をして、後日の提案を依頼し、A氏にも「タイアップの件だけは確認して欲しい」と念押しの連絡を入れました。

   ところが10日ほど経ってB氏が持参したのは、特集記事が1ページ、参加店の広告が1ページという見開きの簡素なものでした。そのうえ、提示された広告単価は、通常の広告スペースよりも高い。

   B氏にただすと、「特集記事はタダですし、単発掲載のお客さまが多い前提なので、この線がギリギリです」と、そっけない答えが。しかしスケジュールも迫っていたので、「そちらが譲れなければしかたがない」と了承しました。

   B氏と彼の応援スタッフがタイアップ広告の案内に動き出すと、各店舗から事務局に電話が入り始めました。内容は営業マンたちに対するクレームです。

「いま広告を取りに来た営業マン、ずいぶん態度でかいんだけど」
「こっちの都合なんか考えず、ガンガン売り込んでくるんだよね」
「説明が乱暴でさ、ちゃんと丁寧にしてくれないと分からないよ」

   普通の営業では考えられないクレームが続々と舞い込んできたのです。私はB氏を呼び、事情を包み隠さず話すと、何とも思いがけない答えが返ってきました。

「うちが特集ページを1ページ無料で提供している話をしても、どの店からも『ありがとう』の一言もなくて。もっと感謝されてもいいと思うんですけど」

「想い」や「勝算」を、いかにして共有するか

   B氏は、疲れた表情で説明を続けます。

「ここだけの話、ハッキリ言って儲からない企画ですし、通常の営業をしながらこれもやるのは大変なんです。事務局から各店舗への事前説明もほとんどないわけですし」
「営業のやり方が失礼であるとかないとかは、受け取り方や価値観の違いでしょう。うちはこのやり方で、全国のお客様に支持をいただいています。ご理解いただきたい」

   あまりに自己中心的な、私から見れば「ブラック」な営業に、言葉を失いました。これから関係を強化していく相手に、こんな事務的な対応でいいものだろうか。正直、今後の取引拡大は難しいと思いました。

   ただ、冷静に考えると、前任者から引き継いだり上司が流れを作ってきた案件は、彼らの「想い」や「勝算」までしっかりと引き継ぐことは難しく、B氏にもやや同情の余地はあります。

   また、私が「新規の30店舗以上と接触できるチャンスを提供している」と考えている点は、目先の営業成績を最優先させたいB氏にとって優先順位が低く「効率の悪い営業をさせられている」と感じているのかもしれません。

   しかし、本人にとっては正当と思える営業活動であろうとも、クライアント側には「ブラック」と写ってしまい、不本意な形で先々の取引を失うことがあるのです。自分がセットしたものでない案件の扱いは、特に注意が必要です。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。執筆にあたり若手ビジネスマンを中心に仕事中の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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