2024年 4月 18日 (木)

「不正を正当化する気持ち」をどうリセットさせるか

「倫理規程への署名」には不正防止の効果がある

   さらに興味深いことに、同じ数字合わせの課題に取り組む前に、「モーセの十戒」をできるだけ思い出させたり(「嘘を言ってはならない」を含む)、「大学の倫理規程に従います」という誓約に署名させたりしたところ、正答数の水増しはゼロになったそうである。

   もちろん、これらの実験が世の中の人間すべての心理を言い表すわけではないが、企業が従業員による不正防止に取り組むうえで参考になる。

   例えば、上司が部下の行動に常に目を配ったり、時に抜き打ちチェックをするなどして、「誰かが見てるぞ」状態を維持できている職場では不正は起こりにくい。

   毎朝始業時に企業理念や行動基準を唱和することも、自分の誠実性や正直さを呼び覚ますきっかけになれば(アリエリー氏は「リセットする」と表現している)、決して無駄ではないといえる。毎年、倫理研修を受講させ誓約書にサインさせる方法も同様だ。

   家族が自分に微笑みかける写真をオフィスの机に飾るのは、日本ではあまりはやらないが、「ずるしたい」という誘惑に負けそうになった時に家族の顔をじっと見るのも、案外そうした効果を期待できるのかもしれない。携帯やスマホの待ち受け画面にして、仕事の合間にそっと見てみるのもいいのではないか。(甘粕潔)

甘粕潔(あまかす・きよし)
1965年生まれ。公認不正検査士(CFE)。地方銀行、リスク管理支援会社勤務を経て現職。企業倫理・不祥事防止に関する研修講師、コンプライアンス態勢強化支援等に従事。企業の社外監査役、コンプライアンス委員、大学院講師等も歴任。『よくわかる金融機関の不祥事件対策』(共著)、『企業不正対策ハンドブック-防止と発見』(共訳)ほか。
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