2020年 9月 25日 (金)

違法でなければそれでいいのか? 「脱法」会計が招いた巨額不正

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   米国に「エンロン」という企業があった。エネルギー取引の新機軸を打ち出し、1990年代後半には「米国で最も革新的な企業」と称賛された。

   しかし、2001年に巨額の粉飾決算が表面化して破綻。多くの社員や株主の生活を破たんさせ、30人以上の逮捕者を出したこの企業の名前は、不正会計の代名詞として語り継がれている。

   先月アメリカで開催された公認不正検査士協会(ACFE)の年次総会において、エンロン事件の「主役」の1人で破綻当時のCFOであったアンドリュー・ファストウ氏(51)が講演し、自身が犯した罪を振り返った。

本人は「誤解を招くが違法とは考えていなかった」

複雑なスキームで法令の網を巧みにかいくぐった
複雑なスキームで法令の網を巧みにかいくぐった

   ファストウ氏は、大学卒業後銀行に勤務。その後、トップビジネススクールでMBAを取得し、1990年にエンロンに入社した。

   財務部門で頭角を現し、1998年にはCFOに昇進。エンロンが急成長の裏で債務を急増させ財務状態が悪化していく中で、ファストウ氏はいわゆるペーパーカンパニーを使って法令の網を巧みにかいくぐりながら、債務を簿外に切り離す複雑なスキームを編み出した。

   結局、簿外処理に行き詰ってエンロンが破たん。粉飾に加担した部下の逮捕によりすべてが明るみに出て、ファストウ氏自身も逮捕された。無数のペーパーカンパニーを乱立させ自らがその役員に就任して報酬を得ていたなど70以上の罪に問われたが、司法取引により捜査に協力したことで減刑を受けた。

   6年の刑期を終えて2011年に出所。現在は、彼の弁護を担当した事務所で書類チェックの仕事をしつつビジネススクールなどで講演し、将来の経営者に自分が得た教訓を伝える日々を送っている。「自分が多くの人に与えたダメージを回復することはできないが、同じような問題の再発防止に少しでも貢献できれば」という思いで活動しているそうだ。

   ファストウ氏はペーパーカンパニーを用いた債務隠しについて、「当時は、誤解を招く(misleading)行為ではあるが違法(illegal)だとは考えていなかった」と語っている。実際、1つ1つのスキームを実行するにあたって、取締役会、顧問弁護士、監査法人から了承は得ていたそうだ。

   最近、「脱法」という言葉がニュースによく登場するが、彼が編み出したスキームは、正に脱法行為といえるのではないか。そして、それを繰り返す中で完全に違法な世界にどっぷり浸かってしまったのだ。

違法でなければ、その行為は他人からとやかく言われる筋合いはないと思いますか?
そう思う。違法でもないことを安易に非難すべきではない。
基本的にはそう思うが、他人に損害を与えるべきではない。
そう思わない。他人が不快や違和感を抱くことはすべきでない。
そう思わない。常識やモラルに反することは社会的制裁が当然。
甘粕潔(あまかす・きよし)
1965年生まれ。公認不正検査士(CFE)。地方銀行、リスク管理支援会社勤務を経て現職。企業倫理・不祥事防止に関する研修講師、コンプライアンス態勢強化支援等に従事。企業の社外監査役、コンプライアンス委員、大学院講師等も歴任。『よくわかる金融機関の不祥事件対策』(共著)、『企業不正対策ハンドブック-防止と発見』(共訳)ほか。
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