2024年 4月 19日 (金)

30代で「やる気が出ない」… それって「オトコの更年期」かも?

   都内の会社に勤めている男性(39)は、妻と子ども1人の3人家族。子どもはもうすぐ高校生になる。一番お金がかかる時期に差し掛かったが、最近何事にも「やる気」が出なくなってしまった。なんとか会社には行っているが、気分は落ち込む一方だという。

「数年前から調子が出ないとは感じていたんですが、週末にいくら寝ても疲れが取れないようになってしまって…。少し休養が必要なのかもしれません」

原因は男性ホルモンの分泌量低下。怠け者に見えることも

城西クリニック(新宿区)の小林一広院長は、男性にも更年期障害があると語る
城西クリニック(新宿区)の小林一広院長は、男性にも更年期障害があると語る

   厚生労働省の「患者調査」によると、精神疾患の患者数は2005年から300万人を超えている。なかでも一番多いのが「うつ病」だ。最近では「新型うつ」など、20代、30代にも患者が増えているのだろう。

   メンズヘルス外来を開設している城西クリニック(東京都新宿区)が2013年3月に行った調査では、42.3%の男性サラリーマンが「新年度に仕事で挑戦したいことがない」と回答。仕事で抱える悩みは「年収が低い」(54.8%)に次いで、「精神的につらい」(36.4%)、「仕事のマンネリ化」(36.1%)、「やる気が出ない」(32.9%)といったモチベーション面の答えが上位を占めている。

「頑張らないといけないのに頑張れない。意欲は落ちる一方、という人は『うつ病』を疑ってもいいかもしれません」

   こう話すのは、同クリニックの精神科医・小林一広院長だ。ストレスが原因なら、それを取り除く。その方法のひとつに、精神科や心療内科のカウンセリングがある。仕事や家庭など、日常生活に支障があるなら、メンタルの問題に向き合う必要がある。

   ただ抗精神薬など、精神科的な治療が奏功しない場合もある。その場合は、男性の更年期障害も疑われる。加齢男性性腺機能低下症候群(late-onset hypogonadism)、別名「LOH症候群」とも呼ばれ、男性ホルモンであるテストステロンの分泌量の低下が原因だ。

   女性と違い、男性には閉経などのきっかけがない。30代前後からテストステロン量が緩やかに減少し、40代になるとその症状が自覚されることが多いという。変調が目に見えにくいため、一見すると怠け者に思えてしまうこともあるようだ

正常値より低い場合には「補充療法」もある

   男性更年期障害は、うつ病との区別がつきにくい。症状は十人十色で、なんとなく調子が悪い、だるい、疲れやすいなどの身体的な症状だけでなく、やる気が出ない、前向きになれないなど精神的な症状を呈することもある。

   小林院長によると、このような患者には精神科と泌尿器科とが知恵を出し合って一番良い治療法を取るべきだという。男性更年期障害でも、うつ症状の心のケアは精神科医がサポートし、うつ病の場合でも泌尿器科の医師がサポートすることもある。

   診察は最初に血液検査を行い、テストステロンの値が正常値より低い場合には男性更年期障害の可能性があるので、テストステロンを少しずつ補充しながら様子を見る。うつ病である場合は、抗うつ剤や抗不安薬で対応する。

   パソコンやスマホ、SNSなどに追い立てられてストレスの多い30代を過ごした結果、ホルモンバランスが崩れやすくなることもある。小林院長は現代人の生活について、「当たり前のことが当たり前にできなくなっている」と指摘する。

   「当たり前のこと」とは、バランスの良い食事をとり、質の良い睡眠を取り、適度な運動などストレス解消の時間を取り、心身ともに健康を保つということだ。

「特に現代人には、質の良い睡眠が必要。寝る前はパソコンなどの端末とにらめっこせず、部屋を暗めに保つなど意識的に眠りに入っていきやすい環境をつくる。これだけでも生活の質は上がるはずです」

   急には無理でも30代から少しずつ生活の「質」を上げることが、将来の変調を予防することにつながるのだ。

小林一広(こばやし・かずひろ)
医療法人社団 城西クリニック院長 NPO法人 F.M.L.理事
1962年生まれ。北里大学医学部卒業後、同大学病院にてメンタルヘルスケアを中心とする医療に従事。
身体疾患と精神面との関わりについて皮膚科、形成外科、薬学博士等の各専門家と一緒に研究を重ね、城西クリニック(東京:新宿)を開院。現在では、「髪の悩みの駆け込み寺」として月間5,900名が来院している。
また、精神科医として心身両面からの頭髪治療に力を注ぎ、国内では唯一、「頭髪」と「心」をケアする『リエゾン治療』を頭髪医療に導入し、「ミタメ」と「ココロ」両方からアプローチする独自の治療を展開。「髪の先」から「心の中」までケアをしている。
城西クリニック

脇坂長興(わきさか・ながおき)
医療法人 脇坂クリニック大阪院長 医学博士 日本形成外科学会専門医。NPO法人 F.M.L.理事
1962年生まれ。聖マリアンナ大学形成外科学講師を経て、2000年10月、関西で唯一の頭髪治療を専門とした脇坂ナカツクリニック(現 脇坂クリニック大阪 「大阪:梅田」)を開院。月に3,700名以上が来院し、その多くは20代~40代。新規相談者も毎月200名に上る。薄毛治療のパイオニアとして、西日本最大の臨床数・改善事例を誇る。治療法にこだわることなく、患者様が笑顔になれる治療を提供することが形成外科医の使命であると考え、日々患者に接している。
脇坂クリニック大阪
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