「万一のための基礎体力づくり」をしながら働くこと
中山氏の会社員時代は、全社売り上げの8割、利益の7割は彼が率いる部署が上げていたという。しかしいくら頑張っても、周囲は「みんな敵」と思える日が続いた。
寝る間を惜しんで仕事をしているのに、社長は銀行との会食に呼び出し、部下は「報告書のチェック」や「クレーム処理への同行」を頼み、クライアントは飲み会に誘うなど足を引っ張るばかり――。そんな傲慢な思いに駆られていたこともあった。
しかし独立した今では、すべての仕事を自分で抱え込み「人を育てなかった自分が100%悪かった」とか、「あの環境のおかげで力がついた」と思えるようになったそうだ。そして、過去の苦しい日々が「未来への投資」になったのだという。
「こんなに大変な思いをしているのに、自分への見返りは少ない。そのことは間違いではないし、そう思うのも当然という側面もあります。しかし、そのように一つひとつの課題を乗り越え、難局を突破していくことが、万一のための準備であり、基礎体力づくりになるのです」(中山氏)
会社で生き残るにしても独立するにしても、「仕事の基礎体力」は欠かせない。任天堂の岩田聡社長は社長に必要な資質として「一番当事者意識が高い人」をあげ、「あらゆる事柄を『自分事』にできる人、『どうにかする』ということに執念があり、せっかちになれる人」が社長に適しているという。
すべてを抱え込んで潰れてしまう人では困るが、「『会社のため』は『自分の未来のため』」(中山氏)という考え方で多くの仕事に立ち向かえる人が、結果的にいつか「会社で大きな裁量を持てる力」や「会社から自由になれる力」を得ることができるというわけだ。