2024年 3月 29日 (金)

「新チャレンジ」に失敗する社長と成功する社長 この姿勢の差が命運を分ける

   住宅資材メーカーO社のS社長は二代目。税理士資格を持ったいとこのTさんが番頭役を務めています。S社長は2年前に「事業の多角化」の旗印の下、Tさんの反対を押し切ってイタリアン・レストランを開店しました。本場で修業した店長も兼ねる腕利きシェフを雇い、資金を投じて店の外観・内装ともかなりハイセンスなものにしたのですが、業績はジリ貧が続き本業の足を引っ張る存在となっていました。

   あるパーティで同席したTさん、レストラン経営に話が及ぶと愚痴っぽく語り始めました。 「言わんこっちゃない。だから本業とは関係のない武家の商法は止めなさいと言ったんですよ。メーカーが客商売なんかやったってうまくいくはずがないって、私は反対したんです」。

「武家の商法」がダメと決めつけるのは…

「現場を見るか、見ないか」で差が出る
「現場を見るか、見ないか」で差が出る

   Tさんは、副業が本業の足を引っ張っている以上、傷が深くならないうちに止めさせたいとの考えでしたが、社長は現場にハッパをかけてV字回復させるとやめる気はサラサラないようで、ほとほとお困りの様子でした。

   そんな会話に、輸入雑貨チェーン店を経営するF社長が、割って入ります。

「Tさん、武家の商法がダメと決めつけるのはどうなんでしょう。たとえ本業とかけ離れていてもやり方次第でうまくいくとは思いますから、外食進出自体が悪いということではないと思います。僕も外食産業には関心があるので、現状をシェフがどう考えているのか大変興味がありますね」

   話はそんなところで終わったのですが、シェフとも知り合いだと言うF社長、事の次第にかなり興味を持った様子で、急遽その帰り道、私と二人で店に寄ってシェフの話を聞いてみようと提案してきたのです。

   食事をしながらシェフをつついてみると、ポツリポツリと話し始めます。

「社長はお客様を連れて食事にはよく来ますが、仕事で来るのは月に1回あるかないか。その都度売上がいかないのはお前のせいだ、と言われて困っています。料理の事は分かりますが、店舗経営は素人ですから」

   彼が言うには、社長は料理では素人でも経営はプロなのだから、もう少し具体的な指示が欲しいと。そしてこっそり教えてくれたのですが、シェフは既にこの店には見切りをつけていて再転職活動中なのだとも話していました。

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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