2020年 12月 3日 (木)

メンテナンス費用「水増し」の巧妙手口 こうして2億円超が消えて行った

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   ITなしには仕事が回らない時代。どんなに小さな組織でも、パソコン、複合機、携帯電話などの電子機器を利用しているだろう。そして、それらが故障したり、古くなったりすれば、専門業者のメンテナンスサービスを利用する。

   ところで、皆さんの会社では、そのようなサービスの請求書を毎回細かくチェックしているだろうか。メンテナンス費用はバカにならないが、まさか、業者が請求書の金額を水増しするとは思わないだろう。有名企業の名前があれば、いちいち明細をチェックせずに支払っているかもしれない。

担当者名で印鑑を偽造

病院に対して不正請求が…
病院に対して不正請求が…

   しかし、不正対策に「まさか」は禁物。今回取り上げる事件は、そう警鐘を鳴らす。

   医療機器の販売を行う上場企業A社の営業所において、営業担当者が約7年にわたり、主要取引先であるB病院に対する保守点検や修理サービスの水増し請求を繰り返し、約2億6000万円の損害を与えていた。

   単に自分の営業成績を水増しするだけでなく、取引先から金銭を詐取するという点で非常に悪質な行為であり、不正を行った社員は懲戒解雇等の厳しい処分を受け、A社も国立病院機構から指名停止等の処分を受けた。

   2014年2月に公表された調査委員会の報告書によれば、不正請求に関与したのは3人だが、係長Cによるものが2億円以上と大半を占める。調査委員会が確認した限りでは、Cが最初に不正に手を染めたのは2006年2月であるが、それ以前の伝票類は既に廃棄されているため、不正の全容は闇の中といえるだろう。

   Cが多用した手口は、保守点検や修理サービスの請求書に、作業実態のない内容を書き込んだり、メーカーへの修理委託や部品交換をしたように偽ったりして、架空請求や水増し請求を行うというものであった。不正を隠ぺいするため、B病院の担当者名で印鑑を偽造して「修理点検報告書」をねつ造し、修理委託や部品仕入の費用も不正に計上して辻褄を合わせていた。

甘粕潔(あまかす・きよし)
1965年生まれ。公認不正検査士(CFE)。地方銀行、リスク管理支援会社勤務を経て現職。企業倫理・不祥事防止に関する研修講師、コンプライアンス態勢強化支援等に従事。企業の社外監査役、コンプライアンス委員、大学院講師等も歴任。『よくわかる金融機関の不祥事件対策』(共著)、『企業不正対策ハンドブック-防止と発見』(共訳)ほか。
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