会議の様子は企業文化の象徴 「意見が出ない」は危険信号

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   半年ほど前の事です。取引先に出向した銀行時代の同僚Tさんから聞いて欲しい話があると食事に誘われ、会うことになりました。

   Tさんが出向した先は、従業員50人ほどのオーナー企業の住宅資材関連メーカーです。社長のS氏は二代目で40代前半。1年ほど前に急逝した創業者のあとを継いで、同じ業界の大手企業から家業の危機を救うべく急遽呼び寄せられました。年長のTさんは、若い経営者の後見役を期待され取引銀行から出向したのです。

社長が出席する会議がない、は「大いに問題あり」

会議は企業文化を体現する――
会議は企業文化を体現する――

   相談は次のような話から始まりました。

「うちの会社は社長が出席する会議がないのだけど、それってよくある話ですか?ズバリそれってアリですか?」

   聞けば、もともと社長を交えた幹部会議はあったものの、S社長が着任して半年ほどで廃止になったのだと。報告ばかりで、社長が皆に意見を求めても沈黙、沈黙で提案や進言のない会議は時間の無駄だとの理由でS社長が廃止。報告は空き時間を使って個別でおこない、浮いた時間はトップ営業に充てることで業務効率が良くなったと社長は胸を張っているのだとか。

   小規模企業では確かに定例の会議がないこともあるのですが、たいていは少人数故日常的に密なトップを囲むコミュニケーションが存在しています。社員20人を超える会社で社長が個別打ち合わせに終始するなら、幹部間、部門間での経営情報共有や意見すり合わせが絶対的に不足するはずです。何より会議は、会社組織におけるフォーマル・コミュニケーションの軸をなすものであり、それ自体が存在しなくてはどう考えても社内コミュニケーションが円滑に回るとは思えません。「大いに問題あり」と私は回答しました。

「そうですよね。社長がいた大企業に比べたら圧倒的に小さな組織だから会議は不要との判断なのでしょうが、幹部会議がないと情報の共有度合いが部門によって異なり社長のフォロー役の私が何事もやりにくく、出向早々どうしたものか困っているのです」

   私の話を聞いたTさんは、悩み顔を露わにしました。会議の復活に向けては、会議削減で業務効率が良くなったなどと言ってはばからないS社長にその必要性や重要性を説いて、説得しなくてはいけません。

中立な進行役である会議ファシリテーターの存在が重要

「意見が出ない会議の会社はたいてい何らかの理由により社内活性化に問題ありですし、いい話ばかりが報告されて悪い話が出ない会議の会社は隠ぺい体質を疑う懸念があります。会議というのはその組織の文化を象徴する存在ですから、本当に重要なのです」

   これは私が会議運営セミナーなどでも話す内容なのですが、Tさんはこの話に反応しました。

「なるほど、では会議がなくなった会社というのは、意思疎通が希薄になって会社存続の危機を内包していると言ってもいいかもしれませんね。そこですね、社長の説得ポイントは。あとはいかに活発に意見が出される会議へ活性化させるか。そこを解決しない限り元の木阿弥になってしまうし、社長も前のままの会議ならいらんと言うでしょうからね…」

   間髪入れずに私が言いました。

「それこそ、社長後見人たるTさんの出番ですよ」

   有意義で活性化された会議を運営するためには、中立な進行役である会議ファシリテーターの存在が重要です。恐らく今までの会議は、事務的な進行役はいたとしても実質、社長がイニシアチブを握るワンマン会議で、参加者も最後は社長の一存ですべて決まるのだから何を言っても仕方ない、と沈黙せざるを得なかったのではないかと。Tさんのような、外様の第三者はこのような組織を活性化させる会議ファシリテーターにはうってつけなのです。

   ファシリテーター役を指名した私の話に自信なさげだったTさんには、社長の説得と並行してファシリテーター研修の類への参加をおすすめしました。

会議が変わると社長も変わるし、社内の雰囲気も変わってきた

   すべての会議に必ずしもファシリテーターが必要と言うわけではありませんが、もし社内の重要会議で意見が出ない、社長の話を聞くだけというような状況であるなら、会議運営そのものに問題ありと考えるのが常套です。またそれはすなわち、組織不活性、行き過ぎたワンマン体質など企業風土の問題の存在をも疑ってかかるべき事態でもあるのです。

   その後、Tさんは社長を説得し無事幹部会議を再開。社長の独走を避けるべく事前の会議の目的や目標の共有からスタートし、自身は勉強しながらファシリテーター・スキルを磨くことで、回を追うごとに建設的な意見交換の場になりつつあるそうです。

「不思議なもので、会議が変わると社長も変わるし、社内の雰囲気も変わってきました。確かに会議は企業文化そのものなのですね」

   会議は企業文化を体現する――。活性化しない会議を形式的に流していないか、行き過ぎたワンマン会議を誰も止めずに放置していないか等々、社内コミュニケーションとしての会議の大切さを今一度見直してみてはいかがでしょうか。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。 連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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