「同じ社名」めぐる大誤解 「わが社は無関係です!」を上手に伝える方法

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   「A社に税申告漏れ指摘」という報道が新聞に載った。実は、我が社も社名は「A社」。報道のあった社とはまったく関係ないのだが、両社は業種も同じで、本社がある都道府県まで同じだ。誤解が広がると困る。どういう対応を取れば良いのか――今回は、こんなケースにおける中小企業の広報担当者の対応について考えてみたい。

自社サイトで見解を公表

   実は、冒頭の例は先日、実際にあった話だ。沖縄県には泡盛メーカー「比嘉酒造」が2社ある。そのうち、「残波」を代表銘柄とする有限会社比嘉酒造(本社・読谷村)に関して、国税当局による申告漏れ指摘や、処分を不服とする裁判などの報道があった。

   これに対し、「まさひろ」「島唄」「海人」を代表銘柄とする株式会社比嘉酒造(本社・糸満市)が自社サイトで「比嘉酒造社名に関して」と題し、両社は「別会社であり、グループ会社ではございません」と説明した。J-CAST会社ウォッチの「社名が同じで大迷惑!? 『裁判報道のあった社とは別会社です』」(2014年11月7日)記事でも、取り上げている。

   まず、申告漏れ報道が出た「有限会社比嘉酒造」の対応をみると、自社サイトで「新聞掲載記事に関するご報告」と題し、「当社の税金に関する新聞報道等があり、皆様に多大なご心配をおかけいたしましたこと、深くお詫び申し上げます」とする文書を公開した。

   要点は、(1)当社と国側とで、役員給与・退職金の適正額について見解の不一致があり、国税当局より追徴課税を受けることとなった、(2)当社としては違法な処分がなされたと強く確信しており、東京地方裁判所において係争中、(3)追徴額については、コンプライアンス重視の社是から、いったん国に対して全額納付済み─―というものだ。この報告は、広報の観点から見て概ね正しい。外形的事実を伝えたうえで、自社と当局との見解の相違点を主張している。文書公開のタイミングも、全国紙報道から1~2日後とまずまずだ。

   欲を言えば、文書の表現が「税金に関する新聞報道等」とあいまいなので、新聞が何を報じたのか、せめて見出しレベルでも良いので伝えてほしかった。また、役員給与・退職金と納税額を示し、申告漏れではないことの説明をしてほしかった。それがないため、説得力に欠ける面は否めない。

「新聞報道には新聞報道で対応する」という発想も

   一方、(報道があった社とは)別会社である、株式会社比嘉酒造が自社サイトで「お知らせ」した内容は、「先般報道がありました有限会社比嘉酒造は別会社であり、グループ会社ではございません」というものだった。これでは、報道内容も分からなければ、報道を受けて株式会社比嘉酒造がどういうメッセージを発したいのかも明確ではない。

   今回のようなケースでは、「たとえば」だが、「先般、『残波』を代表銘柄とする有限会社比嘉酒造に関して、国税当局による申告漏れ指摘や、処分を不服とする裁判などの報道がございましたが、当社は『まさひろ』『島唄』『海人』を代表銘柄とする株式会社比嘉酒造であり、全く関係がございません」と、ズバリ書くべきである。報道が出た有限会社比嘉酒造を慮って明確な表現を避けたのだろうが、説明は社会やお客様に対して行うのだから、事実を書かないと思いが伝わらない。推測を交えず、事実だけを伝えれば、もう一方の社を貶めることにはならない。

   さらに言えば、両社とも自社サイトを使って説明しているが、「新聞報道には新聞報道で対応する」という発想があっていい。沖縄県の県政記者クラブなどへ情報提供を行うのだ。メディアには報道責任があるので、当事者や影響を受ける者の対応や反論は掲載する可能性が大きい。

   中小企業にとっては、リリースを作成して記者クラブへ持ち込むマンパワーに乏しく、手間が大変だと感じるかもしれないが、報道は企業の生死を左右する凶器にもなりかねないのだから、広報対応は重要だ。社会やお客様に何を、どのように伝えるかの広報戦略を普段から磨いてほしい。それが自社の成長だけでなく、いざという時の防御でも有効に働くことになる。(管野吉信)

管野 吉信(かんの・よしのぶ)
1959年生まれ。日刊工業新聞社に記者、編集局デスク・部長として25年間勤務。経済産業省の中小企業政策審議会臨時委員などを務める。東証マザーズ上場のジャパン・デジタル・コンテンツ信託(JDC信託)の広報室長を経て、2012年に「中堅・中小企業の隠れたニュースを世に出す」を理念に、株式会社広報ブレーンを設立。
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