活発化するIPOの死角 IRめぐる勘違いについて

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   日本企業のIPO(新規株式公開)が活発化している。2014年の新規上場企業数は75社(東証1部、2部、マザーズ、ジャスダックの合計)となり、2009年を底に5年連続で増加した。70社を超えるのは10年ぶりのことだ。ところで、株式公開はIR(Investor Relations、投資家向け広報)の始まりでもある。経営者は業績の拡大を目標に時価総額を拡大させる責任があり、自社のおかれている環境や経営状況を正確に投資家に説明しなければならない。少なくとも制度的な情報開示である決算短信、有価証券報告書、四半期報告書、招集通知、コーポレート・ガバナンス報告書、内部統制報告書、適時開示資料は必ず開示しなければならない。

   このため経営者は、IRの担当者を置き、広報体制を構築したと勘違いしているケースが目につく。一般的な広報はPR(Public Relations)と呼ばれ、商品やサービスの販促、企業のイメージアップなどを目的として広く大衆に情報発信している。投資家向けのIRはPRの一部に過ぎないのに、である。

適時開示が広報活動と勘違い?

   上場企業の制度的な情報開示のうち、適時開示資料は、決定事実(新株発行・自己株式処分、資本金の減少、自己株式の取得、合併など)、発生事実(災害に起因する損害、主要株主の異動、訴訟の提起、行政処分など)、決算情報(業績予想や配当予想の修正など)、その他(会社の運営、業務、財産に関する重要事実で、投資家の判断に著しい影響を及ぼすもの)とされている。東証では、それぞれ資料の雛形を用意し、それに当てはめれば開示資料が完成するようにサービスしている。

   そのため、一般的な広報であるPRに比べ創意工夫は限定的となるが、それだけで広報活動を行っているような気になってしまいがちだ。非上場の時から広報活動をあまり行っておらず、上場を機にIR担当を設けた企業は、広報のノウハウが不足しており、上場会社としての責務である制度的な情報開示さえしっかり行っていれば非難されることはないと考えてしまう。しかし、非上場会社に比べ社会的な責務が増す上場会社が、投資家向け広報に終始するのはおかしいし、企業価値向上の芽を自ら積んでしまうに等しい。

日経や東洋経済が担当者を付けてくれるのに生かせない

   一例を挙げよう。上場会社になると、原則として日本経済新聞と東洋経済新報社は担当記者を付ける。日経会社情報、会社四季報を有しているからだ。かといって、会社を訪問するのは最初のごあいさつや担当者が代わった時などで、あとは電話やメールで状況を取材するケースが多い。非上場の中堅・中小企業からみれば、メディア側からアプローチしてくれるわけだから、うらやましい話だろう。

   ところが、それを生かせない上場会社が非常に多い。適時開示に縛られているために、余計なことが記事になると担当者の責任問題になりかねないことを恐れる。経営トップはメディアに慣れていない。そもそも、広報の仕方や記者との付き合い方が分からない。結果的に、記者とは消極的なお付き合いになってしまう。アプローチしてくれる記者とも信頼関係を築けないのだから、他メディアへの積極的なアプローチもしていない。そんなケースをたくさん見てきた。それでは、適時開示以外の新製品、新技術、新サービスや企業のイメージアップ戦略などが広く大衆に伝わらない。

   一方、非上場の中堅・中小企業は何とか新製品、新技術、新サービスをメディアに売り込めないかと努めているところが多い。上場会社は、市場を通じて資金を調達できるのだから、非上場会社に比べて社会性が高い。それだけ広報面でも有利なポジションにいる。非上場会社の活力に学ぶ点があるのではないだろうか。(管野吉信)

管野 吉信(かんの・よしのぶ)
1959年生まれ。日刊工業新聞社に記者、編集局デスク・部長として25年間勤務。経済産業省の中小企業政策審議会臨時委員などを務める。東証マザーズ上場のジャパン・デジタル・コンテンツ信託(JDC信託)の広報室長を経て、2012年に「中堅・中小企業の隠れたニュースを世に出す」を理念に、株式会社広報ブレーンを設立。
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