2024年 4月 26日 (金)

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経営における「論と義」とは

   経営における論と義?さらに詳しい解説を聞きました。

「今は本やセミナーから、マネジメントの理論はたくさん手に入る時代です。30年ほど前、私の時代がそのハシリでした。ドラッカーあたりの翻訳本が世に出され経営戦略などという言葉が使われ始めたのも、ちょうどその頃。私も父の古臭いやり方に反発して、理論武装して随分闘ったものです。絶対に自分が正しいと譲りませんでした。これが論。しかし、論が正しいだけで優秀な経営者にはなれないと、父に諭されたものが義だったのです」

   論とは理論の論であると分かります。では義は何であるのか。

「分かりやすく言うなら、義理人情の義です。正確には、儒教に言うところの正しい行いを守ること、それが義。義には利という反対語があって、それは自己の欲求を表すものである、と言えばさらに分かりやすいでしょうか。子は親の庇護なしに独力で育ったわけではありません。育った後にこそ、親への義を欠いてはいかんのです」

   父から社長の座を譲られた当時に、理論先行で新しいビジネスへの展開を主張するF氏に、父は「ビジネスでは内外に義を欠くな」「義を払いつつ次に進め」と教えたそうです。義の基本にあるものは、先人を敬う気持ち、身近なところで言えば親を敬う気持ちを忘れないこと。オーナー企業における内なる義とは、先代を敬うことに他ならないのです。

   「何を言っているんだ、時代遅れのポンコツめと思いましたよ」とF氏。氏は自分やり方が正しいことを確信し、尊敬する先輩経営者に同意を求めつつ父を無視してでも新たなビジネスに舵を切ろうと覚悟を決めます。しかし、父を過去の遺物だ老いぼれだと批判するF氏に、先輩は意外な反応を示したのです。

「お父様が長年の努力の末、成果を残されてここまで会社を続けて来られた。あなた自身も、お父様とその会社のおかげで今があるわけです。お父様の言う義というのは、ビジネスにおいて礼を尽くすことの大切さのことです。あなたのやりたいことがいくら正しくとも、礼を失するような義を無視したやり方は必ずどこかでつまずくと思います。よくよく先人には敬意を払って相談をしながらすすめること、それからでも遅くはないでしょう」
大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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