2021年 5月 9日 (日)

「下町ロケット」見て鼻息荒い経営者 「メインバンク替えてやる!」の落とし穴

来店不要なのでコロナ禍でも安心!顧客満足度1位のサービスとは?

ちょっとばかり注意が必要

   低金利と大銀行のブランドに惹かれて、業績好調の中小企業社長がメガバンクの取引を増やしていくというのはよくある話なのですが、ちょっとばかり注意が必要です。

   私が銀行にいた頃の話ですが、北関東のエリア飲食チェーンH社でも同じようなことがありました。H社は地元のG銀行をメインバンクにしていたのですが、当時のG銀は地元でも有名なお堅い銀行で、とにかく融資スタンスが保守的。イケイケのH社社長は、お堅いG銀に日常から不満が多く、多店舗で広域に自社のブームを作りたいと目論んでいたことから「のろまな地銀が事業の足を引っ張っている」とすら言っていました。

   私がいた銀行の判断も、H社の急激な拡大戦略はチャンスであると同時にリスクも大きいこと、自己資本に比べて借入依存度が高くなりすぎること、資産が少なく保全(物的および人的担保)が脆弱であったこと、などから当面は慎重スタンス。メインバンクと歩調を合わせながら対応していく方針でありました。

   ところが、都内から一本釣り的に法人取引の拡大戦略で攻め入ってきたメガバンクT銀行が、「うちに多店舗展開のお手伝いをさせてください」と低金利の融資を売り込み、H社は念願の広域多店舗展開に着手すべく借入を大幅に増やしてしまったのです。これを知ったG銀や私の銀行は一層慎重姿勢になり、T銀は次々と借入の肩代わりをおこないアッという間に数字上でメインバンクが入れ替わってしまったのでした。

   しかししばらくして、多店舗展開が思ったような成果を上げていないと分かるや、運転資金の折り返しをストップしたり、店舗を譲渡させて長期資金の返済を迫ったり、手のひらを返したような対応を取り始めました。社長はG銀や私の銀行に泣きついてきましたが、多額に貸し込んだメインバンクのT銀が撤退方向ではG銀もウチも本社融資部の了解が得られず、結局T銀の仲介で大手に事業譲渡する形で実質廃業となったのです。

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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