2024年 4月 26日 (金)

今後の「幸せ」のキーワード 日本の場合、それは「貧乏慣れ」?

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   先日、東京で時間ができたので、ネットカフェに行ってみました。

   空港のラウンジのような綺麗な空間で、飲み物やPC、本が山ほど置いてある贅沢な空間で、実に居心地がいい。さすがジャパンクオリティと、感心するようなところでした。

   が、その後案内された個室の狭さたるや。

   その圧迫感はかなりのものであり、ネットカフェ難民となって、毎日ここに宿泊するとなると、ちょっと厳しそうだなとも思ってしまいました。

寝ている場所は「屋根はあるが壁なし」

ハードルを下げて幸福度を上げるしかない
ハードルを下げて幸福度を上げるしかない

   そんな記憶を持ってカンボジアプノンペンに帰ってきて、自宅の門を開けてもらうためにブザーを押します。そうすると、駐車場で寝ていたスタッフがのそのそと起き出して門を開けてくれます。

   プノンペンでは、トゥクトゥク(バイクに荷台を付けたタクシー)のドライバーは、よく高級マンションの駐車場で寝ています。

   マンションの管理人が、ガードマンとして彼らを雇っており、彼らは駐車場に置いた簡易ベッドやトゥクトゥクの荷台に寝泊まりしているのです。

   防犯のため、マンションの門は門で閉じられており、ブザーを押すと、駐車場に寝ている彼らが起きて、門を開けてくれる。そして、私が中に入るとまた門が閉じられる。人力のオートロックです。

   彼らが寝ているのは駐車場なので、屋根はありますが、壁はありません。

   常夏のカンボジアなので寒くはありませんが、砂埃や蚊は多いです。1日、2日であればキャンプ気分で楽しいかもしれませんが、無期限となるとネットカフェよりも大変そうです。

彼らに悲壮感がないワケ

   でも、彼らに悲壮感はありません。むしろ結構楽しそうに生きています。

   それは、そうやってサバイブするのが当たり前だからです。

   屋根がないところで寝泊まりしてた人にとっては、駐車場での宿泊は屋根があるから幸せなわけです。

   でも、エアコンがある所で寝泊まりしていた人にとっては、駐車場での宿泊は拷問です。

   幸せというモノは相対的なモノであり、同じ環境であっても感じ方は天と地ほど違うのです。

   日本の貧困を救うということの難しいところは、ここにあります。

   正直、日本の貧困を感じている人の多くは、世界的に見たらまだかなり豊かなんです。

   ただ、周りが、幼少時代がもっと豊かだったから、相対的に辛いというのが原因だったりするのです。

   そうすると、グローバルで考えると助ける優先順位はどっち?って考えてしまうと後回しになりがちになってしまいます。

   例えば、100万円あっても、日本の貧困家庭を1つ助けるのも難しいです。

   でも、カンボジアで100万円あれば、屋根と壁のあるところで眠れる人を数十人増やすことができます。「海外の難民を助ける前に、日本の貧困を助けろ」という話は一理あるのですが、費用対効果を考えると、海外の人の方が、同じ予算でたくさんの人を助けられるんです。

「健康で文化的な最低限度の生活」の基準を下げる教育

   そんな状況下で、日本の貧困を助ける理由はただひとつ。「同じ国の人だから」ということです。日本の世論が右傾化している理由のひとつはこの辺があるのでしょう。

   カンボジアで生活していると、「健康で文化的な最低限度の生活」のレベルが日本より格段に低いことがわかります。そして、その基準が低いからこそ、(日本人から見たら貧しくても)楽しく暮らせているということが分かります。

   これから、かなりの高確率で経済的に貧しくなっていく日本においては、少しずつ「健康で文化的な最低限度の生活」の基準を下げていくための教育や啓蒙活動が必要な気がしてなりません。

   そうやって「貧乏慣れ」していくことが、衰退途上国日本の幸福度を上げるための唯一の施策だと思うのです。(森山たつを)

森山たつを
海外就職研究家。米系IT企業に7年、日系大手製造業に2年勤務後、ビジネスクラスで1年間世界一周の旅に出る。帰国して日系IT企業で2年勤務後、アジア7か国で就職活動をした経験から「アジア海外就職」を多くの人と伝えている。著書に「アジア転職読本」(翔泳社)「はじめてのアジア海外就職」(さんこう社)がある。また、電子書籍「ビジネスクラスのバックパッカー もりぞお世界一周紀行」を連続刊行中。ツイッター @mota2008Google+、ブログ「もりぞお海外研究所
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