2019年 6月 19日 (水)

絡んだ糸は科学だけではほどけない 「ノニストレス」に気づいてこそ

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   厚生労働省がこのほど発表した2015年度の「過労死等の労災補償状況」によると、精神障害による労働災害の請求件数は1515件で過去最多になった。心を病んで会社を休む人の数も増加傾向だ。何が問題なのか? 働く人が仕事を通じて幸福になるには、どうすればいいのか?

ハサミを用いない

知らずしらず自己中心的に
知らずしらず自己中心的に

   立派な会社で、上司にも部下にもまったく問題がないと思われるような職場でも、メンタルヘルス不全は起こる。糸が絡まり固定され、適応困難になる。カウンセラーの仕事は、絡んだ糸を一本一本、丹念にほどいていく作業と似ている。カウンセラーはハサミを用いない。

   そして考える。人事制度に問題はないか? 上司のリーダーシップに問題はないか? 個人のセルフケアに問題はないか?

   しかし、答えはなかなか見つからない。

   人々は、こんな疑問への最適解を得ようと情報を求める。折から、人々の知的渇望を満たすようなテレビ番組が放送された。NHKスペシャル「キラーストレス」(第1回6月18日、第2回6月19日)である。とくに第2回は、最新の科学が模索するストレス解消法という内容だったので、わくわくしながら見た。

   番組では、ストレスホルモンについて詳しく紹介していた。脳の情動をつかさどる扁桃体が興奮すると、コルチゾールが分泌され海馬を傷つけるという内容だった。

   しかし、よく考えてみると、確かに最新の知見も織り込まれているものの、ほとんどは以前から知られている内容だ。「コルチゾールの発見」は1936年のセリエ博士によるネズミの実験に端を発する。

   セロトニンやアドレナリンの海馬との関係も、イエール大学のデューク博士らのPTSD研究における実験で何年も前に明らかになっている。

   「コーピング(ストレスにうまく対処すること)」も、最新とはいえない。20年以上前にUCBのラザルス博士によって提唱されたものだ。

佐藤隆(さとう・たかし)
現在、「総合心理教育研究所」主宰。グロービス経営大学院教授。カナダストレス研究所研究員。臨床心理学や精神保健学などを専攻。これまでに、東海大学短期大学部の学科長などを務め、学術活動だけでなく、多数の企業の管理職向け研修にも携わる。著書に『ストレスと上手につき合う法』『職場のメンタルヘルス実践ガイド』など多数。
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