喫煙者がタバコをやめるのは難しい。逆に周囲がやめさせるのも簡単ではない。この難題に、イギリスの王立がん研究基金(CancerResearchUK)が広告代理店、AbbottMeadVickersBBDOの協力を得て、タバコが喫煙者のからだをどれだけむしばんでいるかを伝える「デジタルポスター」を制作した。ポスターに「息」を吹きかけるタバコが「からだに悪い」なんてことは誰でも分かりきっている。ただ、実際に不調が現れるまでやめられない人がほとんどで、自身のからだの中で起きている変化というのは自覚しにくいからだ。一人でも多くの喫煙者に、なんとかタバコをやめてもらおうと、イギリスの王立がん研究基金が制作したのは、「BreathTest(肺のテスト)」という禁煙啓蒙が目的の「デジタルポスター」。しかし、バス停横のスペースに設置されたポスターの枠内は、何も書かれていない「白紙」の状態。これが何事かと関心を引いたようで、喫煙者らしき人らが不思議そうに覗きこむ。どうやら、なにか仕掛けがあるらしい。見れば、ポスター内の空白の枠の上部には、「Takeadeepbreathandblowhere」(ここに向かって、深く息を吸って吐いてください)という指示と小型センサーがあるだけ。指示どおりに息を吹きかけると、その間だけ真っ白だった枠の中に「言葉」が浮かび上がるというのだが――。本来なら、浮かび上がってくる言葉は次の通り。「Thelongeryoublowthemoreofthismessageyou'llbeabletoread.Ifyouareasmokeryoumightnotgetmuchfurtherthanthisline.However,withhelpfromaStopSmokingadviseritismuchmorelikelythatyouwillbeabletoquitforgood,soyouwillhaveagreaterchanceofmakingitallthewaydowntothispointhere.」(息を長く吐けば吐くほど、このメッセージを読むことができます。もしあなたが喫煙者なら、ここまでしか読めないかもしれません。しかし、StopSmokingアドバイザーの助けを借りれば、これを最後にタバコをやめられる可能性が高くなりますよ。そうすれば、きっとここまで読めるようになるでしょう)王立がん研究基金によれば、喫煙は肺機能に影響を及ぼし、息を長く吐き続けることが難しくなるという。このからだの変化を喫煙者に実感してもらうことで、タバコをやめるきっかけにしてもらおうと考えたのだ。うろたえる喫煙者が続出イギリスでは、このデジタルポスターを実際に試す、通りすがりの人びとを捉えた動画が一般の人によって公開され、話題になっている。その動画によると、最後までメッセージを読めない喫煙者が続出したようだ。なかには1文目すらうっすらとしか出てこない人もおり、かなりうろたえている。からだは正直――。王立がん研究基金の思惑は、見事に当たったようだ。これならヘビースモーカーもさすがに懲りるということらしい。