尊敬されないお父さん... なにが、どこがダメ?(江上剛)
「女房子供から尊敬されません。飲んで帰ったり、休日ゴロゴロしているのがいけないのかもしれません。でも、ちゃんと仕事をしているとい自負はあります。『父さんだって頑張っているんだ』と訴えていいものでしょうか」
訴えなくても分かっていると思いますよ、お父さん!
息子との「絆」感じた一言
私は一度だけ、高校生だった息子から「親父、頑張れよ」と言われたことがある。
第一勧銀総会屋事件の最中、私は昼夜、その解決に奔走していた。そんな最中、M相談役が自殺され、私は病院に駆けつけた。その時、携帯電話の充電器を忘れたため、息子に持って来てくれるように頼んだ。
息子は、自宅から自転車を飛ばし、それを持って来てくれた。帰り際、「親父、頑張れよ」と一言。そう言ってくれたんだ。
不愛想だったが、その言葉は、今も忘れられない。
その息子も今では結婚し、孫もできたけど、私は、息子との絆はあの「親父、頑張れよ」という一つの言葉だと思っているんだ。
日々、「お父さん、ありがとう」って言うような家庭はヘンだよ。そんな家庭、あるのかな。私だって一度だけだし、妻からは言われたことはない。誕生日のプレゼントはくれるけどね......
言葉にしないでも、あなたには奥さんもお子さんも感謝されていると思う。
でも、休日にゴロゴロばかりしないで、たまに「明日は、休みだけど、どこかに行こうか」と明るく提案してみたらどうだろう。奥さんやお子さんが、「はっ」と驚くかもしれないよ。
「のに地獄に堕ちるなよ」
でも、急に「明日」というと、「友達と予定がある」とお子さんに言われ、「私だってテニス仲間とランチよ」と奥さんに拒否され、「お前ら!俺をなんだと思ってんだ。せっかく俺が遊びに行こうと思ってんのに!」と、ブチ切れるのがオチだろうね。
その危険性を回避するには、事前に奥さんやお子さんに相談することかな。
楽しい家族旅行や、家族での食事の後、きっと「お父さん、ありがとう」と一言、言ってくれるでしょう。きっとね。
でも、あまり期待しないほうがいいね。
こんな言葉をあなたに進ぜましょう。私の母親がよく言っていたのだけどね。「『のに地獄』にだけは堕ちるなよ」ということ。
「のに地獄」とは、「〇〇なのに」「〇〇してあげたのに」という「のに」。人間って何かにつけて相手に「〇〇なのに」と思いがち。「こんなに愛しているのに」「こんなに尽くしているのに」など......
あなたの場合なら「こんなにお前たちのために頑張っているのに」ということになる。それなのに、「感謝」が足りないと腹が立つわけだ。
相手に尽くしたり、喜んでもらったりするのは当たり前の行為なのだから、「のに」って思わないこと。返してもらおうなんて思わないこと。この「のに地獄」に堕ちないだけで、どれだけ精神的に楽になるか、計り知れない。
これは家族関係だけではなく、人間関係全般に言えることだけどね。