政府の旗振りではじまった、「月末の金曜日は、早めに仕事を終えて豊かに、幸せにすごす」という新しいアクション「プレミアムフライデー」。その第1回の2月24日に、実際に早帰りした人は全体の17.0%だった(全国の20代~50代までの2015人が対象、企業向けは654社が回答。プレミアムフライデー推進協議会事務局調べ)。お世辞にも多いとはいえないが、2回目の3月は年度末の多忙ななか、3回目の4月はゴールデンウィーク直前、4回目は5月の連休後で盛り上がりに欠けて......なにやら早くも失速しているようだが、そうしたなか、プレミアムフライデーよりも実現できそうな「定時退社協会」が誕生した。「早く帰ること」に重きを置いてはいません「定時退社協会」を立ち上げたのは、「よなよなエール」で知られるヤッホーブルーイング。2016年4月に準備委員会が設置され、2017年5月から本格的に始動している。定時退社協会の井手直行理事長(ヤッホーブルーイング社長)は、ホームページで、「早く帰れる夜をふやそう」と呼びかける。さてはプレミアムフライデーに対抗したのかと、広報部の飯野真梨子さんにJ‐CASTニュース・会社ウォッチ編集部が取材すると、「もともとは関係ありませんでした」との答えが......そもそも同社では退社時間に関しては、「お互いを尊重する」社風で、社長も子どもが熱を出したときには早く帰るし、若手がキャリアを磨くために残業していても気にしないのだという。飯野さんは、「当社では『ビールに味を!人生に幸せを!』をモットーに、日本中にクラフトビールの魅力を伝え、ビールを通じてささやかな幸せを届けることを使命としています。プレミアムフライデーのように早く帰ることに重きを置くのではなく、『もっと柔軟に働き、仕事終わりのビールを楽しんでもらいたい』との思いから、定時退社協会を立ち上げたんです」と説明する。世界初の「定時退社訓練」に24人が参加より多くの人が楽しく幸せな気持ちでクラフトビールを楽しめるよう、その環境づくりを進めるという定時退社協会の設立主旨を広めようと、2017年5月14日には一般企業から参加者を募って、世界初の「たのしくて、よくかえれる!定時退社訓練」を実施した。第1回の訓練には、一般企業9社から24人が参加。時間制限があるなか、「メールをミスなくタイピングせよ」「部下の書類をもれなく承認せよ」「ホワイトボードをくまなく消し切れ」「できるだけ多くの資料を作成せよ」といった、定時退社を阻む課題をクリアするべく、訓練に取り組んだ。訓練の参加者からは、「定時退社を自分にとっての当たり前にしていきたい」(デジタル機器メーカー・商品企画)「明日からは定時に帰れる気がします」(航空会社・国際線販売)などと評判も上々。参加者の意識が変わるなど、訓練の効果も確認できたようだ。さらに定時退社協会では、「定時退社ステッカー」や「定時退社ネクタイ」、同僚に定時を知らせる「定時退社ふえ」などのグッズも考案中。協会員も随時受け付けていて、「定時、ないしはなるべく早く退社できるよう、前向きに楽しく努力する」「定時退社に思いを馳せながらおいしいビールで乾杯する」「ビールを飲んでいる様子を『#定時退社ビール』として写真つきで投稿する」の3ステップを踏めば、自動的に協会員に認定される。ツイッターの「#定時退社協会」をみると、「はい、今日も頑張りました!こはく色でカンパーイ!」「報告!定時退社できました!なので、今日は#定時退社ビール飲みます」「今日もお疲れさまでした......ちゃんと定時に帰れました。というか、今日付で退職しました......なので、お疲れさまビール」などと、おのおの定時退社後のビールを嗜んでいた。気になるのは乾杯のビールに何を飲むのかだが、「乾杯のビールは『よなよなエール』でも、他社さんの商品でも協会員に認定されます。まずはおいしいビールを味わう時間を増やしていただければ」(飯野真梨子さん)とのことだった。
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