家電量販店、百貨店、旅行代理店の店頭や電車内の広告で、こんなのによく出くわす。2万円、3万円といった「大台」のすぐ手前に価格が設定されているのだ。「テレビ 19,800円」「男性用スーツ 29,800円」「ノートパソコン 49,800円」「グアム4日間 69,800円」「マンション3LDK 3,998万円」どれも微妙な金額である。どうして、2万円とか3万円とかにしなかったのか――。スーパーは「8」のオンパレードだ想像するに、たとえば、1万9800円のテレビは店としては2万円以上で売りたかったし、そうでなければ赤字である。だが、ここはひとつ、日ごろのご愛顧に応えての出血サービスで、2万円以下にしたのだろうか。悪く考えると、逆の場合もありうる。本当は1万8000円でも十分にもうかる。だけど、1万9800円とすると、出血サービスをしているようにも見える。客が飛びついてくるだろう。1万9800円に設定した理由は案外、このあたりにあるのかもしれない。いずれにしろ、こんなたぐいの価格を見るようになって随分と久しいが、いっこうになくなる気配がない。いや、すっかり定着している。そして最近、あらためて気づいたのだけど、値札にはどうも「8」という数字があふれている。1万9800円などでは、8は下3ケタに出てくるが、スーパーに行くと、(僕が見て回った限りでは)商品の本体価格(税抜き価格)の下1ケタに8がわんさと出てくる。88円、128円、158円、208円、358円、398円、428円、538円......380円、480円、680円といった下2ケタの8も目立つ。行きつけのスーパーで顔見知りの副店長に「なんで、8ばかりなの?」と尋ねたら、「8は末広がりで、縁起がいいのではないでしょうか」とのこと。漢数字の「八」は、たしかに末広がりである。中国人は「8」が大好きでも、たとえば、93円で売るとちょうどいい商品を、店は縁起を担いで5円も安い88円にするだろうか。多分、5円プラスの98円にするのではないだろうか。縁起とやらのおかげで、客は高いものを買わされることになる。真偽不明ながら、8が目立つのは、増えている中国人観光客のせいもあるとか。中国語の「八」は発音が「発財」(金持ちになる)や「発展」の「発」に似ていて、中国人が大好きだからだ。中国人は結婚のお祝いに、「1000元」(1元=16~17円)ではなく「888元」を送ったりする。値札に対する疑惑には確たる「証拠」はない。でも、数字がどこか不自然で、セコイ感じがする。僕の推理は当たらずといえども遠からずではないだろうか。(岩城元)
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