「聞きながすだけではリスニング能力は上がらない」――。それが何度も失敗を繰り返した末に、私がたどり着いた結論です。30年近くあらゆる教材や学習法を試してきましたが、英語の聞き取りだけは「ながら学習」が通用しませんでした。結局のところ、リスニング力を鍛える「王道」はたった一つ、だったのです。秘策その13 2時間の「聞きながし」より5分の「集中」!「受験英語」の経験しかなかった私が、一番苦労したのが英語の聞き取りでした。ジャパニーズイングリッシュに慣れた耳には、ネイティブが話す英語はまったくの別モノ。学生当時、リスニングの授業はほとんどありませんでしたから、聞き取りは大の苦手でした。何とかしてリスニング力を鍛えようと、「英語漬け」の環境に身を置いたりしました。リビングや台所で英語の音声をずっと流しっぱなしにしたり、通勤時間に英語のニュースを聞いたり。お風呂にiPodを持ち込んで、湯船につかりながら英語を聞いたりもしました。ところが、どんなに長時間触れても、頭(耳)の中にちっとも英語が残りません。まさに「聞きながし」で、右から左に流れ去るだけでした。そんな私でしたが、TOEICL&Rの学習を機に、驚くほど英語が聞き取れるようになりました。以前ご紹介をした「TOEICL&RTEST出る単特急金のフレーズ」(朝日新聞出版)を使って、音声を聞きながら単語を覚えているうちに、急にネイティブが話す英語が聞き取れるようになったのです。詳しいメカニズムはわかりませんが、毎日5分でも「集中して」英語を聞くことが「耳のトレーニング」になっていたのでしょう。不思議なことに、たった5分でも集中して英単語やリスニング問題の音声を聞いた後は、海外ニュースやドラマの英単語が一つひとつクリアに聞きとれます。長時間英語を「聞きながし」ても、一切得られなかった効果です。結局のところ、「集中して英語を聞く」トレーニングを積み重ねることでしか、聞き取る能力は鍛えられないことを痛感しました。2時間の「聞き流し」よりたった5分の「集中」。 数々の失敗を経て、「集中」こそがリスニング学習の「王道」なのだ!と思います。秘策その14 「集中」トレーニングは穴埋めとシャドーイングでそれでは、具体的な「集中」トレーニング方法を二つご紹介しましょう。一つ目は、穴埋めディクテーションです。私が使っていた「TOEIC特急シリーズ」(朝日新聞出版)のリスニング問題集に、穴埋めディクテーション用のページがあり、音声を聞きながら空欄に単語を書き込む演習ができました。筆者のカリスマTOEIC講師、神崎正哉さんが推奨していたので半信半疑でやってみたら、これがスゴイ!空欄に書き込む単語を聞き取ろうと集中するうちに、リスニング力がグングン鍛えられました。二つ目の方法は、シャドーイングです。テキストを広げて、音声を聞きながら聞こえてきた英語を、そのまま発音します。スピードを落としたり、途中で音声を止めたりしないで、とにかくネイティブの英語をそのままなぞりながら英文を読みます。途中でつっかえたり、単語を聞き逃しても気にしない。音声をなぞろうという意識が働いて、思った以上に集中力が増すトレーニング法です。穴埋めディクテーションやシャドーイングを続けるうちに、下記の効果が得られました。・気がつけばネイティブのスピードに慣れていた・はじめから終わりまで返し読みをしない習慣が身についた・頭の中で日本語に置き換えられるようになった英語の聞き取りは、「読む」「書く」「話す」と比べても、トレーニング効果を実感しやすいと思います。ぜひ、「5分間の集中トレーニング」を取り入れてみてください。(井津川倫子)今週のニュースな英語 ~ローマ法王もトランプ大統領も「様子を見よう」?~最近、海外ニュースでよく目に(耳に)するのが「waitandsee」(様子を見よう)という表現です。たとえば、米国のトランプ大統領が北朝鮮に対して挑発するような発言の後に、「waitandsee」(相手の反応を見てみよう)と言ってみたり、欧州連合(EU)離脱に関する英国のメイ首相の演説に対して反対派が「waitandsee」(成り行きを見てみよう)と言ってみたり。そういえば、今年の1月にトランプ氏が大統領に就任した時は、コメントを求められたローマ法王が「waitandsee」と言ったという報道もありました。「コメントは時期尚早だ」というニュアンスで使ったのでしょうか。「waitandsee」は、ビジネスの場面でもよく使います。「Let'swaitandsee」(少し様子を見よう)など、「静観しよう」というニュアンスで使うことが多いですが、じつはちょっと斜に構えて「まあ、見てろよ!」といったニュアンスで使うときもあります。前後の文脈からニュアンスをかぎ取るようにしましょう。
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