2021年 9月 21日 (火)

数字とビジョンの両立が活力を生む ソニーが打った「無目標計画」の一手(大関暁夫)

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VCの「圧力」に、上場計画を白紙撤回

   上場という大命題に向けて、T社長もVC出身役員の意見を無視するわけにもいかず、会社の雰囲気は激変。会議は中期経営計画の目標達成に向け、足もとの計画数字の達成が至上主義となり、社長自身もとにかく目の前の大手取引先からの仕事獲得を最優先で業務に当たれと、そんなゲキを飛ばさざるを得ない状況に追い込まれます。

   月々の計画達成が難しくなればなるほどVCからの外圧はきつくなり、同社の生命線である製品開発は中長期的視点に立ったものから、目先の受注を増やすためという視点に変わらざるを得なくなったのです。

   この状況に危機感を覚えたT社長は、「これでは、私が思い描いた会社ではない」と、VCからの出資を返済して、上場計画を白紙に戻すことにしました。

「VCのビジネスモデルは簡単に言えば、出資先企業を上場させて持ち株を市場放出することでキャピタルゲインを得ることが目的です。すなわち、とりあえず上場に漕ぎ着けさえすればそれでいいわけで、その先の中長期的な展望にまで視野はほとんど及んでいません。もちろん、上場に向けては中長期戦略の実現性も問われますが、まずは何より目先の業績重視です。ウチのような歴史の浅い企業は、業績至上主義が強く打ち出されると、開発重視の社内風土まで変革させられかねません。私は、行き過ぎた業績至上主義のリスクを、身を持って感じたのです。本当に納得のいく、いい会社を永続させるために上場を諦めました」

   社員の生活を支える営利企業である以上、短期的な収益を追いかけることは確かに大切ですが、同時に企業の個性を失わせないような中長期の展望がないと、企業は計数に追いまくられ、疲弊して最悪はブラック企業化してしまうのかもしれません。

   ソニーのような大企業でも、創業間もないベンチャー企業でも基本は同じ。短期と中期、計数とビジョン、その両立が活力あふれる企業経営を実現する。改めて強く実感させられるところです。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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