2018年 12月 15日 (土)

「3万円のディナーを奢ってもらうのが当然の世界」に片足突っ込んで思うこと(北条かや)

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   女友達から食事会に誘われた。年上の男性数名と、有名店でディナーをするという。合コンとか、大学生がやるような遊びではない。大人同士のステキな会食だ。私は期待し、二つ返事で承諾した。

   「どんなお店?」と聞いて、送られてきた食べログのウェブサイトを見て驚愕。口コミの点数は4.8近く。「死ぬまでに一度は行きたい」「念願かなって最高の味を堪能した」など、絶賛の嵐なのだ。予約が困難な店らしく、女友達の知り合いが半年かかってようやく席をゲットしてくれた。

  • 男性におごってもらうお寿司、やっぱり美味しい!?
    男性におごってもらうお寿司、やっぱり美味しい!?

予算は「1人3万円以上」に目玉が飛び出る

   ほうほう、と予算の個所を見て、目玉が飛び出た。

「一人あたりの予算:3~5万円」

   えええ!? 私はすかさず、彼女に連絡する。

「このお店って、カード使えるかなぁ。やっぱり現金は下ろしていくべき? いくらもって行ったらいいのか...... 緊張してきた......」

   すると彼女が言ったのだ。

「いやいや、誘ってくれた男性が全部ごちそうしてくれるに決まってるじゃない。彼が予約したんだから、全部出してくれるよ」

   ひぇ~~~~! 私の眼球はこの短時間で何度飛び出たことだろう。1人3万円の食事を、初対面の女性に奢ってくれる男性が存在するのか――。

   大げさでなく、この世には「奢られるのが当たり前の世界」がある。

   個人的には、3万円のコース料理など記憶にある限り経験したことはないが、そういえば離婚してから、男性との食事で財布を出したことがほとんどない。出そうとしても、東京の男性は当たり前のようにごちそうしてくれるのだ。

   こんなことを書くと、きっとイヤな奴だと思われるだろう。自分でも卑しい気がするし、「私、奢られるのが当たり前だと思っています」なんて言う女子がいたら、老婆心丸出しで「いやいやアンタ、ちょっとは謙虚になったほうが......」とお説教してしまうかもしれない。

   でも自分だって、同じことをやっている。卑しい。

奢ってもらって嬉しいのは「タダ」だからじゃない!

   ちょっと前、漫画家の西原理恵子さんが朝日新聞に寄せたメッセージが話題になった。

「娘や同世代の女の子たちには、『王子様を待たないで。社長の奥さんを目指すより社長になろう。お寿司と指輪は自分で買おう』と言いたい。男に頼り切るのは危険。しっかり仕事をして、自分で稼いでほしいです。『お寿司は男の人に奢ってもらうもの』と思い込んでいる女の人がいるけど、自腹で食べたほうがうまいでございますわよ!」
「女の子へ『寿司と指輪は自分で買おう』」(2017年3月3日付、朝日新聞より抜粋)

   確かに、男に頼り切る人生はリスクが高い。所詮は他人だから、依存してもいいことはなにもない。女が自分で稼いだお金を好きなものに使う喜びは、自由と一体になって人生を豊かにする。

   でも、「男の人に奢ってもらうお寿司」を、否定するのもまたツラいものだ。私が高級な食事をごちそうしてもらって嬉しいのは、「タダでご飯が食べられて嬉しい」からではない。ご飯という「食べモノ」ではなく、ごちそうするに値する時間を過ごした相手だと見なされた「コト」が嬉しいからだ。

   だいたい、長く摂食障害をやっていたから、高カロリーの外食はできるだけしたくない。にもかかわらず、奢ってもらうと嬉しいのは、食事が美味しかったからというよりは、相手の「ごちそうしてあげた」という満足感に貢献する喜びを感じられるからだ。

   卑近な言い方をすれば、食事を通して承認欲求を満たし合うゲームが、うまく行ったから嬉しい。浅ましいといえば浅ましいが、こういう人間の欲はなかなか制御できない。

   西原理恵子さんの言いたいことは、とてもよくわかる。でも私は、「自腹で食べるお寿司」も、「男の人に奢ってもらうお寿司」も、両方選べる自由を手に入れたい。だから経済力が必要であるし、この原稿も日々そういう気持ちで書いています。(北条かや)

北条かや
北条かや(ほうじょう・かや)
1986年、金沢生まれ。京都大学大学院文学研究科修了。近著『インターネットで死ぬということ』ほか、『本当は結婚したくないのだ症候群』『整形した女は幸せになっているのか』『キャバ嬢の社会学』などがある。
【Twitter】@kaya_hojo
【ブログ】コスプレで女やってますけど
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