2024年 4月 27日 (土)

伸長する「ダウンロードカード」の仕掛人が明かす、新しい音楽メディアの可能性

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   ダウンロード配信やサブスクリプション(定額制)サービスの台頭で、音楽が「データ」の形で所有され、共有されるものになって久しい。それにより、音楽CDはもちろん、オーディオ機器が売れなくなり、いまや「音楽もスマホで聴く」ものとなった。

   そうしたなか、ジワジワと注目を集めているのが「ダウンロードカード」。QRコードやインターネットのURLからアクセスすることで、スマートフォンやパソコンに音源をダウンロードできる。その手軽さと、コレクション欲を刺激する「モノ」としての魅力を備えた新しい音楽メディアだ。

   このダウンロードカードを制作する、ダイキサウンド(東京都港区)とクリプトン・フューチャー・メディア(北海道札幌市)がタッグを組み、2019年1月12日?19日までの1週間、東京・渋谷のタワーレコード渋谷店「CUTUP STUDIO」で「DOWNLOAD CARD SUMMIT 2019」を開催している。

  • クリプトン・フューチャー・メディアの笹原崇寛さん(左)とダイキサウンドの栗原幸祐さん(右)
    クリプトン・フューチャー・メディアの笹原崇寛さん(左)とダイキサウンドの栗原幸祐さん(右)
  • クリプトン・フューチャー・メディアの笹原崇寛さん(左)とダイキサウンドの栗原幸祐さん(右)

「ビックリマンシール」のノリで「音楽」を収集する魅力

   クリプトン・フューチャー・メディアの笹原崇寛さんによると、「ダウンロードカード」は「どこでも音源を楽しめる時代になり、ダウンロードやストリーミングのサービスが増えてくる中で、フィジカルとデジタルの間を埋めるものとして、ダウンロードカードの存在が浮上してきました」と話す。

   ダウンロードカード自体は、じつは14年前に存在して、当時はガラケーに着メロや着うたをダウンロードするためのものだった。それを2014年、スマホが普及してインフラが整い始めたことで、「再びスタートさせることになった」(笹原さん)。データとして音源を手に入れつつ、カードという「モノ」としても手元に残せるという点が大きな特徴だ。

   ダイキサウンドの栗原幸祐さんは、

「カードに絵柄を付けることで希少性も高められるし、複数パターンを目隠しして販売することで開封するときのワクワク感も醸成できます。僕自身もまさにカード世代。野球チップスのカードとかビックリマンシールとか、夢中で集めていましたね。そういう楽しみ方もユーザーの方々に共有してもらえたらうれしいです」

といって笑う。

   そうしたなか、今回の「DOWNLOAD CARD SUMMIT 2019」は、笹原さんと栗原さんが、ダウンロードカードの認知度アップを目指すことで意気投合。東京と札幌という距離を超えての飲み会をきっかけに、開催の運びとなった。

   他社がダウンロードカードを取り扱うようになり、タイトル数(楽曲数)が増えてきたのはここ1?2年のこと。リピーターの増加で売り上げが上がり、かつアーティストにも認知されてはきたが、「エンドユーザーにはまだまだ届いていない状況」(栗原さん)。そこを打開する。

タワーレコード渋谷店で開催中の「DOWNLOAD CARD SUMMIT 2019」のもよう
タワーレコード渋谷店で開催中の「DOWNLOAD CARD SUMMIT 2019」のもよう

音楽だけじゃない! ダウンロードカードの可能性

   笹原さんに、クリプトン社製のスマホ用音楽カード「SONOCA」の特徴を聞くと、

「買ってすぐにスマホで音楽をダウンロードして聴けるということを一番大事にしています。カード裏面のQRコードを読み込んでいただくと音源がダウンロードでき、プレイヤーアプリをインストールした状態で再生すると歌詞を見ることもできます。またパソコンでもダウンロード、再生が可能で、ハイレゾ音源や動画ファイルを収録することもできます。 さらに、弊社は初音ミクなどのキャラクターライセンスを持っているので、同人利用の範疇であれば収録する楽曲のタイトルやアートワークなどに無償利用していただけます」

と説明。ブックレットの付録や書籍の付録CD・DVDの代わりとして利用したり、ラジオ番組のイベント特典としてトークを収録したりと、さまざまな事例を増やしている。

   「アイディア次第で、いろいろな活用の仕方ができると思うので、クリエイターや企業の皆さんとおもしろい使い方を検討していきたい」と話す。

クリプトン・フューチャー・メディアのスマホ用音楽カード「SONOCA」
クリプトン・フューチャー・メディアのスマホ用音楽カード「SONOCA」

   一方、ダイキサウンド社製のミュージックカード「M∞CARD(エムカード)」の特徴は、幅広い種類のファイルに対応していること。

「音源のほか、映像や画像、電子書籍、VRコンテンツも収録でき、容量も1ギガバイト(GB)あるので、かなり自由度は高いと思います。あとは『当たりカード』と、当たった場合のスペシャルコンテンツを設定できる機能やコンテンツをくじ引きのようにランダムに表示させる機能、コンテンツを後日追加できる機能など、オプションもいくつか用意しています。イベント来場者やアパレルブランドの買い物客への特典、映画の予約チケットの特典、雑誌のおまけなどの幅広い用途で利用していただいています」

と、栗原さん。

   お笑い芸人のコントを収録した「コントカード」も作成。音楽以外の用途にも使える機会が増えてきたことに手応えを感じている。

ダイキサウンドのミュージックカード「M∞CARD(エムカード)」
ダイキサウンドのミュージックカード「M∞CARD(エムカード)」

アーティストにきちんと還元できる新しいモノを作りたい

   イベント期間中はアーティストによる音楽ライブ、トークショーなどを実施。ダウンロードカードの新作をリリースしている。

   作品のパッケージには、こだわりをもっている。「CD世代にとってジャケットとは特別なものですし、アーティストやクリエイターにとっても思い入れの強いもの。そういう事情も汲み取り、パッケージをCDのジャケット仕様にしました。帯とジャケットを飾れるための飾り台もついています。フィジカルとしての価値をどう高めるかという部分は、とても意識しました」と、栗原さんは言う。

   音楽業界全体としては、定額制サービスがメインになりつつあるが、ダウンロードやストリーミングだけの販売チャネルに加えて、店頭や物販といったオフラインの販路を拡大することにも寄与できるのが、ダウンロードカードの強み。形あるモノとして、手に取り、手元に残すことができるダウンロードカードは、レコードやCD世代にはなじみやすく、ひと昔前の「ジャケ買い」のような楽しみ方もできるかもしれない。

   その一方で、笹原さんも栗原さんも、音楽業界の現状を憂いでもいる。

   栗原さんは、

「デジタル配信のメリットは大いにありますが、アーティストサイドに立って考えると、一番愛情を込めて時間をかけて作ったCDが売れず、売れるのはもっぱらTシャツなどのグッズというのでは、なんだか寂しい気持ちになりますよね。CDが売れないという事実を時代の流れとして受けとめながら、そういうアーティストの方々に何か還元できるような新しいモノを作っていくというのが、我々の音楽業界に対する貢献というか、使命のような気がしています」

と、熱く語る。

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