2019年 9月 17日 (火)

ピューロランドを再建!女性社長のユニーク手腕にハローキティもにっこり

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   ハローキティやマイメロディなど、世界でも「kawaii(かわいい)」ブームを作ったサンリオ。そのキャラクターたちと親しめるテーマパーク、サンリオピューロランド(東京都多摩市)が好調だ。2019年7月31日に発表されたサンリオの「20年3月期(第1四半期=4~6月)」決算によると来場者数は前年同期比8.4%増だった。

   しかし、サンリオピューロランドは数年前までは不況の影響もあって長く赤字経営続きで、あちらこちらにほころびが目立ち、そのため一層客足を遠のかせる負のスパイラルにはまっていたという。そんなどん底状態にあったピューロランドに乗り込み、救世主となったのは元サンリオ社員の女性だった。

「来場者4倍のV字回復! サンリオピューロランドの人づくり」(小巻亜矢著)ダイヤモンド社
  • 「敬老の日」を前に、おじいちゃん、おばあちゃんとの来場を呼びかけるサンリオピューロランドのホームページ
    「敬老の日」を前に、おじいちゃん、おばあちゃんとの来場を呼びかけるサンリオピューロランドのホームページ

社長に宛てた上申書きっかけ

   本書「来場者4倍のV字回復! サンリオピューロランドの人づくり」の著者、小巻亜矢さん(現サンリオエンターテイメント社長)がその女性。小巻さんが手腕を発揮したのは、経費の見直しなどではなく、従業員間のコミュニケーションを重視した組織再生、人材育成だった。

   小巻さんは大学卒業後にサンリオに入社。結婚して退社後、しばらくしてから再訪したピューロランドのすさんだ様子に驚き、早速再建案をしたため、サンリオの辻信太郎社長(当時)に上申した。そして、あにはからんや、その実行の任務を依頼されるのだが、個人的にはそれまでの間に、出産、離婚、そして闘病、心理学を学ぶため東京大学大学院への進学などを経験しており、本書はビジネス書ではあるが、波乱万丈のバイオグラフィーとして読むこともできる。

   ピューロランドの開園は1990年。世界でも数少ない屋内型テーマパークで天候に関係なく楽しめることなどから開園直後は盛況だったが、その後客足が爆発的に伸びるようなことはなく、来場者数は91年に約195万人を記録したあとは長く、前年の実績を下回ることが続いていた。

   小巻さんがピューロランドを再訪したのは開園の年以来「15年ぶり」の2014年。その様子を目の当たりにして、15年前との違いにがくぜんとする。「全体的に暗く、どんよりしていました」。スタッフに笑顔がなく、閑散とした園内で手持ち無沙汰だ。パレードが何時からか尋ねると「わかんないっすね」。レストランの食事は温かいもののはずが冷たい。「それ以前に食べたいと思えるメニューがない」ありさまだ。また来たいと思わせる魅力はどこにもない。これでは客は減るばかりだ。

   小巻さんは惨状を見かね、同園は、改善すればまだまだ可能性があることを辻社長に上申。すると「君がやってみないか」と問われ、まずは、顧問という立場でピューロランドに乗り込むことになった。

気軽に話せる風土づくり

   「全体的に暗く、どんよりした」現場に立ち、小巻さんはその落ち込んだ雰囲気の原因は社員やアルバイトスタッフら従業員間のコミュニケーションが不足していることだと理解する。小巻さんの専門の分野は、経営などではなく、東大大学院で学んだキャリアもある心理学。経験や学んだことを生かしたアプローチにより「スタッフ同士が気軽に話せる風土づくり」に努めた。

   約200人の社員、約700人いるアルバイトらと時間や方法を工夫して面談を重ね、全員の話を聞いた。その際には「自分だったらどうするか」などと問いかけて考えを聞き出し、現場での積極的振る舞いを奨励するよう心がけた。大学院での教育学の研究で学んだ「やさしい話し方」「あたたかな聴き方」を自ら実践して、スタッフらの間での浸透を図り、社内のコミュニケーションが円滑化。アイデアの提案などが活発化した。

   スタッフ間の個々のレベルの次にコミュニケーションの向上を促したのは組織間レベル。「部署間での意思疎通や情報共有不足」はけっこう重症で、たとえば、舞台で行うショーでメーンカラーはオレンジなのに、それに関連する限定グッズはピンクだったりと、統一が必要な演出にもかかわらずバラバラなことがめだっていた。小巻さんが出した答えは「コンセプト会議で組織全体に横串を通す」という。

   グッズを手掛ける販売部、イベントを展開する企画部、そして営業部や運営部などを通じて必要な連携が足りないとみての結論。「コンセプト会議」では、これらの部署ごとの代表者が集まって企画のコンセプトを共有するようにした。

バックヤード改修の効果

   小巻さんはまた、スタッフの士気をたかめるためにバックヤードの環境改善にも尽力。ピューロランドの性格上、女性スタッフの役割に期待が多く集まるところだが、その女性スタッフにとって「とても大切な場所」であるトイレの様子に凍り付いた。洗面台のボウルや鏡にはヒビ、個室の扉はささくれ立ち、便器は和式が中心で、洋式は便座が冷たく「心も冷え切るありさま」だったのだ。

   「このままでは絶対にダメだ」と小巻さん。「300万円くらいならなんとか...」と自費も辞さない思いで改修を決意。辻社長に許可を求め、惨状を切々と訴えた。最終的には会社負担で改修が実施されることに。工事が終わると、スタッフの士気向上の点では効果てきめん。「『会社は自分たちのことを考えてくれている』と感じてくれるようになったことが大きかった」。トイレがきれいになってからはネガティブな会話が激減する効果もあったという。

   小巻さんが赴任した2014年のピューロランドの来場者数は126万人。15年からは毎年、前年より10%増を続けており18年は219万人と、はじめて200万人を突破した。

   小巻さんが実践したのは「上から目線の指示型」ではなく、現場と密にコミュニケーションをとり、可能性を引き出すやり方で、自身では「お母さん型リーダー」を自認。新しいリーダー像を示した一冊。

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「来場者4倍のV字回復! サンリオピューロランドの人づくり」
小巻亜矢著
ダイヤモンド社
税別1400円

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