ラグビー日本代表の「強さ」を引き出した「ONE TEAM」 その根底にあった戦略の転換とは?(大関暁夫)
「一人のリーダーに頼らない」チームづくり
第2フェーズの指揮を執ったのは、現役時代に日本代表チームでもプレー経験のある、ジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチです。日本人の文化を知るジョセフ氏は、基礎プレーが完成した日本チームにアドリブの導入を試み、ジョーンズ時代に棚上げされていたアンストラクチャーの強化を図ります。
アンストラクチャーの強化では、その根底を支える考え方としてポジション間の連携や個々人のまとまりを重視。「ONE TEAM」の旗印の下10人のリーダーを指名し、「一人のリーダーに頼らないチーム」づくりを心がけてきました。
前大会では一つもなかったアンストラクチャーからのトライが、日本大会は7つにものぼり、二人の指導者による2段階戦略は、今大会見事に身を結んだと言えるでしょう。
この2段階成長戦略は、個人的に人材育成戦略上、古くからいわれる「守・破・離」の精神にも相通じるものであると感じています。「守・破・離」の精神は、中世観世流能の大家である世阿弥の考え方であるとも言い伝えられるもので、師匠と弟子の関係は、「守」に始まり「破」を経て「離」に至るというものです。
すなわち、まず初めは師の決めた定形の教えを徹底的に「守」ることで一定の水準に達することを目指します。それが達成できた段階で次のステップである、師の教えをベースにしながらも自分独自の判断ややり方で少し「破」ってオリジナリティを出していくステップに移行。さらにその「破」のステップが板につき、オリジナリティ溢れる段階に入ったなら、いよいよ師の下を「離」れて自ら弟子をとる段階に至る、という流れです。