色には「色彩心理」という、いわゆる「色の意味」があります。私たちは生まれてきてから、目を開ければすべてに色がついていて、無意識のうちに色から心理的効果や生理的効果、精神的効果を得ています。ただ、それはじつに日常に溶け込み、当たり前すぎて、特別なものとは感じていないのが実情。しかし、色を変えることで売り上げがアップしたり、自分の思いが伝わりやすくなったりしたらどうでしょうか?そこで、今回は「謝罪」の場面で有効なファッションの「色」についてお話します。「謝罪」に場違いすぎる色を着けたら......少し前の出来事です。2018年5月にあったニュースで、日本大学のアメリカンフットボール部の選手が、関西学院大学の選手を悪質なタックルでケガさせた事件がありました。世間を騒がせた日大アメリカンフットボール部の内田正人監督。関学大へ謝罪に向かった際に締めていたのは、「ピンク」のネクタイでした。謝罪の内容や対応も相まって、さらに批判を浴びたのです。なぜ、ピンクだったのでしょうか――。それは日大が箱根駅伝に初めて出たときのたすきの色で、「日大スポーツ」を象徴するカラーなのです。ただ、謝罪には場違いすぎました。自分軸で行けばいいところ、そうでないところ。要は色遣いもTPOが大切なのです。おまけに関西(かんせい)学院大を「かんさい学院大」と、何度も言い間違えたのです。身に着ける色は相手に与える印象もありますが、自分自身にもすごく影響が出るもの。もちろん、ピンク色自体が悪いと言っているわけではありません。色の意味には必ず良い面と悪い面が、どの色も同じだけあります。ピンクの色彩心理(意味)は、「やさしさ」「依頼心」「甘え上手」「ロマンチスト」「女性らしさ」「可愛らしさ」です。いい大人の謝罪会見で、ピンクを身につけると、「反省の色が見えず、逆に許してよ」と甘えてくる印象を与えます。いくら口で「責任はすべて私にあります」と言ったところで、まったく伝わらない。それ以上にふざけているように感じるのです。「謝罪」にふさわしい色とは?では、「謝罪」の場面では何色がふさわしいのでしょうか?テレビでよく見る、会社の謝罪会見では、「黒」ではないでしょうか?ところが、じつは黒もあまりよくありません。黒は強く見せたいやカッコよく見せたい。また、自分が弱っている時に、鎧を着て本当の心の内側を見せなかったり、もう攻撃しないでくれ、余計なことは聞かないでくれといった、自己防御に見えるのです。黒の色彩心理は、「威厳」「完璧主義」「独立心」「ポーカーフェイス」です。こうしてみると、なんだか「上から目線」で、とても謝っているとは思えませんよね。謝罪の場面でもっとも効果的なのは、グレーです。グレーの色彩心理は、「控えめ」「おとなしい」「弱々しさ」「デリケート」「用心深い」「ソフト」です。グレー系のスーツやネクタイを身に着けていくと、「もうこれ以上、この人を責めるのは、かわいそうだな」と思わせるのです。そして、できればダークグレーよりライトグレーを選んでください。ダークグレーになればなるほど「黒」の要素が入ってくるので、謝ってはいるけれど、本当は何か隠しているのではないかという不信感を与えてしまいます。そうですね。ネクタイも無地のライトグレーの色合いがいいと思います。本当に心から謝っていたとしても、着ている服でそう思われないとしたら、すごくもったいないですね。(南川真輝)
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