日本の2019年の出生数が、年間90万人割れすることが確実になった。政府予想よりも2年早く、90万人を割り込むこととなり、人口減少が一段と鮮明化した。これは、厚生労働省が発表した人口動態統計の2019年1~9月の累計出生数が前年度と比べて5.6%のマイナスとなり、67万3800人となったことでわかった。そもそも、「90万人割れ」は予測された事態だ国立社会保障・人口問題研究所が2017年にまとめた推計では、2019年の出生数は92万1000人(総人口ベース)だった。90万人割れは2021年(88.6万人)だったため、政府予想より2年早いことになる。確かに、2019年の出生数は90万人を割り込みそうだが、これは十分に予想された事態だったわけだ。以下の、厚労省の人口動態調査から筆者が作成したデータをご覧になればわかるだろう。厚生労働省人口動態調査<出生数の推移>1974年 202万9989人1975年 190万1440人1976年 183万2617人1977年 175万5100人1979年 164万2580人1980年 157万6889人1984年 148万9780人1986年 138万2946人1989年 124万6802人1993年 118万8282人2005年 106万2530人2016年 97万6978人(前年比2万8699人減・2.9%減)2017年94万6065人(前年比3万0913人減・3.2%減)2018年91万8397人(前年比2万7668人減・2.9%減)このように日本の出生数は、1974年には200万人を超えていたが、翌1975年には200万人を割り込んだ。その後、1980年まではほぼ毎年10万人のペースで出生数が減少した。1984年に150万人を割り込んだあとも、減少が続き、2016年に出生数はついに100万人を下回った。1993年から2016年までの間、出生数の減少が緩やかになっているのは、1970年前後に生まれた、いわゆる団塊の世代ジュニアが結婚・出産期だったことによる。しかし、団塊の世代ジュニアが40歳代に入ると、出生数は再び減少のペースを速めている。アップデートされていない「欠陥」データでの推計さて、近年の出生数の減少ペースは、2016年が前年比で約2万9000人(2.9%減)、2017年が約3万人(3.2%減)、2018年が約2万8000人(2.9%減)となっている。つまり、近年の傾向では、出生数は平均3%の減少が予測できる。2018年の出生者数91万8397人から3%減少すると推計すれば、2万7551人の減少となり、推計される2019年の出生者数は89万0846人となる。出生数の90万人割れは予測できるということだ。これは、筆者が作成した以下の合計特殊出生率の推移から見てもわかるように、近年の合計特殊出生率は1.4人前半で推移しており、2019年についても合計特殊出生率が大きく低下しているわけではない。すなわち、これは国立社会保障・人口問題研究所が2017年にまとめた推計が「甘かった」ということであり、推計自体をアップデートされていないことに要因があるといえる。<合計特殊出生数の推移>1974年 2.05人1975年 1.91人1976年 1.85人1978年 1.79人1987年 1.69人1989年 1.57人1993年 1.46人1997年 1.39人2003年 1.29人2005年 1.26人2006年 1.32人2012年 1.41人2015年 1.45人2016年 1.44人2017年 1.43人2018年 1.42人問題は出生数の減少を悲観視するのではなく、出生数の減少に歯止めをかけ、少子化を打開するために、出産や子育てに有効な環境づくりを早急に進めていくことにある。(鷲尾香一)
記事に戻る