2024年 4月 27日 (土)

じつは危ないこんな会社! 「会議」「報告」は本当に営業活動の「ムダ」なのか?(大関暁夫)

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   営業支援ソフト開発を手がける民間企業による「日本の営業に関する意識・実態調査」が公表され、話題を呼んでいます。

   メディアによる、ややセンセーショナルなその取り上げ方については、営業コンサルティングを生業とする身からはちょっと疑問符がつくので、この調査の正しい理解について取り上げておきたいと思います。

  • 会議も報告もなくしてしまっては営業の進展は望めない
    会議も報告もなくしてしまっては営業の進展は望めない
  • 会議も報告もなくしてしまっては営業の進展は望めない

「営業会議」で最も重要なことはなにか!?

   まず、調査概要です。

◆「日本の営業に関する意識・実態調査」
・ 調査企画:HubSpot Japan株式会社
・ 調査対象:経営者・役員515名、法人営業担当者515名、買い手となる経営者・役員・社員310名

   調査の中で、報道が特に注目事項として取り上げているのは、「働く時間のうちムダだと感じる時間の割合」という質問に対する回答で、全回答者の平均が25.5%を占めているというものです。

   さらに追加質問で、「営業の業務の中でムダと感じる」ものを選択式で質問した回答のうち、1位と2位で多かった答えが「社内会議(33.9%)」「社内報告業務(32.4%)」という項目が上げられていることが、ことさらに強調して報道されていました。

   この結果だけからうかがい知れるのは、「会議」や「報告」に費やす時間があったら、その時間をもっと営業活動に回したい、という営業担当者の心の叫びであるかのように思えます。

   これは取りも直さず、「会議」や「報告」の必要を感じない、あるいは営業担当として何の得もないと感じていることの裏返しでもあると言えます。

   しかしこれは、じつは会議や報告そのものが悪いのではなく、ちゃんと営業担当の役に立つ形で会議や報告が運営されている会社があまりに少ないということの表れなのではないか、と個人的には思うのです。

   そこで、ここではあるべき営業会議や営業報告とは何なのか、について以下に記します。

   まず営業会議。営業会議で最も重要なことは、同僚が携わった好事例の情報を共有することです。私個人が営業指導をさせていただく際のベースになる営業理論に、「営業成果は営業知識と営業活動量の掛け算である(営業成果=営業知識×営業活動量)」という考え方があります。

   これは、私個人の担当者及び管理者としての経験から導き出し、その後のコンサルティング活動の中でも、業種、ルート先営業、新規営業を問わず、例外なく通用する基本理論として営業コンサルティングを支えている考え方です。

「営業成果=営業知識×営業活動量」の理論

   この法則における営業知識には大きく3つあり、それは商品知識、情報知識、経験知識と言われるものです。商品知識は自社とライバルの商品に関する知識、情報知識とは主に相手先企業の個別情報および業界情報を含めた知識のことです。

   一方、経験知識とは、自社における営業成功事例を各担当者の知識として蓄えることであると話しています。

   どういうことかと言えば、自社のどのような商品、サービス、技術がどのようなアプローチによってどのような業種の企業から成約をもらったのか、仮に成約に至らなくとも引き合いがあった関心を持たれたという事実を、担当者間で共有し担当者の知識化することで次なる営業活動に活かす、ということ。

   それこそが経験知識であり、営業会議でこそ経験知識の拡充が図れるのです。

   世の企業の営業会議でありがちなのは、「A君が、B社から○○百万円の成約をとりつけました。はい、拍手~。他の皆も負けないようにがんばれ!」というような、儀礼的な流れです。

   これではまったく会議の意味がありません。会議メンバーである営業担当が、「会議はムダな時間」と思っても、無理はありません。まず重要なことは、会議の目的を明確に伝えて共有し、その目的にそった会議とすることです。経験知識の共有が目的であるのならそう宣言したうえで、しっかりと皆で他の担当者の成功経験を共有できるような運営をしなくてはいけないのです。

   営業報告についても同様です。何のための営業報告なのか、担当者に目的が明確に伝わっていないから「ムダな作業」と感じられてしまうのです。

   営業報告の目的は、上司が営業担当者の日々の活動を把握して、適切なアドバイスを与えたり同行訪問先を決めたりすることです。それが日々何のフォードバックもなく、単なる記録提出になっているとしたら、担当者は「ムダな作業をさせられている」と感じても無理のないところでしょう。

   ちなみに、私の考えでは営業日報の記載事項は必要最低限項目に留め(訪問先、目的、面談相手、面談時間程度。文章で内容を書かせるなどは不要)、日報をもとに毎日担当者一人あたり5~10分の個別面談で詳細内容をヒアリングして、直接アドバイスすることを推奨しています。

コミュニケーションなくして営業の進展は望めない

   このような、本来あるべき目的を明確化し担当者の営業活動の役に立つような会議運営や報告書作成をしていない企業があまりに多いからこそ、今回のアンケート結果のように「会議や報告書作成はムダな時間」と受け止めている営業担当者が多いのだと思われます。

   企業経営者が今回のようなアンケート結果を受けて、まずやるべきは、会議運営や報告書作成に関する管理者の正しい認識を持たせること。すなわち、管理者教育です。

   今回のようなメディアで話題になった調査結果を受けて、安易に「会議や報告はムダに廃止!」などと結論づけては欲しくありません。営業において情報を共有するコミュニケーションはある意味「生命線」であり、会議も報告もなくしてしまっては、営業の進展は望めません。要はやり方の問題です。

   この調査を、自社の営業会議や営業報告があるべき形で運営されているか、上記を参考に検証、見直しをする機会としていただければ幸いです。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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