数々の疑惑が噴出した「桜を見る会」の真相が見えないまま、臨時国会が閉会になりました。与党側からは、「逃げ切った!」「これで、『桜問題』はすぐに忘れられるだろう」といった安堵の声も聞こえるようですが、果たして世間の反応はどうでしょうか?海外の報道を見る限り、「安倍スキャンダル」は、まだまだ忘れられる気配はなさそうです。空気が一変した「シュレッダー発言」海外メディアは「桜を見る会」にこれまでも関心を示していましたが、空気が一変したのは安倍晋三首相の「あの」国会答弁でした。招待者名簿を内閣府が廃棄していた問題で、担当職員が「障害者雇用」であると言及。名簿廃棄と障害者雇用を関連付けた「配慮を欠いた発言」だと国内でも非難を浴びましたが、これを海外メディアが大きく取り上げたからです。ThestrangetaleofJapan'sprimeminister,officialdocumentsandaverylargeshredder(公文書と巨大シュレッダー、日本の首相の奇妙な話:TheWashingtonPost)JapanPMSlammedforRevealingOperatorofDocumentShredderinScandalWasDisabled(日本の首相が、スキャンダルになっている書類の廃棄を障害者が担当したと明かして、強く非難されている:TheNewYorkTimes)beslammed:強く非難される私も安倍首相の国会答弁を聞いて、驚きのあまりひっくり返りそうになりましたが、あの発言は完全にNGでしょう。担当者が「障害者雇用」であることはまったく問題の本質と関係ありません。「海外だったらボコボコに叩かれるだろうな」と思っていたら、案の定、複数の海外メディアが即座に反応しました。人権問題により敏感な海外メディアが、障害者を差別するような安倍首相の発言を問題視したのは当然でしょう。なかには、「最悪の言い訳」と強く非難した記事もありました。「言ってはいけないこと」の一線を越えた発言だと受け止められたようです。安倍スキャンダルは「おいしいネタ」が満載!海外メディアの報道を見る限り、「桜を見る会」は忘れられるどころかより厳しいトーンで報じられています。なかでも皮肉たっぷりなのが、フランスのAFP通信の報道です。Cherryblossomspromptfull-blownscandalforJapan'sPM(「桜」が日本の首相のスキャンダルを「満開」にした)prompt:刺激する、促すfull-blown:満開の「桜を見る会」が「ItmightbethemostJapaneseofpoliticalscandals」(日本最大の政治スキャンダルになるかもしれない)と示しつつ、その理由を「Ithasplentyofjuicyelements」(「おいしいネタ」がてんこ盛り)だと分析しています。「juicy」は、日本語でも飲み物や食べ物が「ジューシー」だという意味で使いますが、「興味をそそる」とか「ビジネスのうまみがある」といった意味もあります。ここでは、「おいしいネタ」というニュアンスでしょうか。しかも、「おいしいネタ」として、「マフィアと疑われる人たちが出席していた」「証拠が消える」「障害者雇用をめぐる安倍首相の失言」をあげています。世間の関心を引く「ネタ」が次から次へと出てくるので、もっと大きなスキャンダルに発展する可能性があると示唆しているのでしょうが、それにしても容赦のないストレートな表現です。ほかのメディアも、安倍首相の支持率が低下し始めたことや、首相の4選を望まないといったアンケート結果を報じています。JapanCherryBlossomScandalStartstoDragDownAbeSupport (日本の「桜を見る会」スキャンダルが、安倍首相の支持率を落とし始めた:Bloomberg)Asscandalsimmers,majorityofJapanfirmswantPMAbetofinishterm(スキャンダルがくすぶっているなか、日本企業の大多数が安倍首相の4選を望まない:Reuters)simmer:くすぶるこうして見ると、海外メディアでは、「桜を見る会」については「スキャンダル」だという認識がすっかり定着しているようです。AFPが指摘するように、「マフィア」や「シュレッダー」など、万人の関心をそそる「おいしいネタ」が次々と飛び出してきますから、まだまだ忘れられることはなさそう。海外メディアのストレートな報道、これからも追っかけていきたいと思います。(井津川倫子)
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