2020年 1月 20日 (月)

【お正月は本を読む!】アマゾン急成長の両輪、元経営会議メンバーが明かす「イノベーション」と「人事評価」

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   1980年代末には、世界の企業時価総額トップ20に14社の日本企業の名前が並んでいた。その約30年後、2019年8月末時点のランキングでは、GAFAと呼ばれる米企業が上位を占め、日本企業は43位にやっとトヨタ自動車が顔を出すにとどまるという変わりようだ。

   本書「amazonの絶対思考」(扶桑社)は、GAFAの中でも急成長を遂げた、アマゾンの成功の理由を解き明かし、アマゾン・ウォッチャーらによる「評論」ではなく、アマゾンジャパン経営会議の元メンバーによるインサイドからの解説書。類書とはひと味もふた味も違う臨場感がある。

「amazonの絶対思考」(星健一著) 扶桑社
  • 「顧客中心の判断基準は妥協するな」
    「顧客中心の判断基準は妥協するな」

オンライン書店からスタート

   アマゾンが日本でサービスを開始したのは2000年11月。当時は「世界最大のオンライン書店」の触れ込みだった。その後、瞬く間に扱う商品を拡大し、何でも買える通販サイトに変貌。さらに、利便性を高めてサービスの幅を広げ、いまではサブスクリプションサービスの「プライム」や、クラウドコンピューティング「AWS (アマゾンウェブサービス)」などは、市民生活やビジネスで、場合によってはインフラに等しい存在になっている。

   これらのことからもわかることだが、アマゾンは、IT (情報技術)、IoT (モノのインターネット)、ITC (情報通信技術)の進化を的確に見極め、自動化のメカニズムの構築で長期的ビジョンでビジネスを拡張してきた。

   常に顧客目線でサービスを展開し、イノベーションに投資を惜しまず、大きなステップで走ってきた成果がGAFAの一角を占める成長ぶりだ。著者の星健一さんがアマゾンジャパンに入社した2008年の年間売り上げは2000億円程度。その10年後には1兆5000億円を超える規模にまで拡大。数百人ほどだった社員数は7000人に増えた。

   星さんは、1989年から約20年間、機械メーカーや商社に勤務。それぞれの会社で海外赴任の経験を持ち、欧州各国で現地法人の社長を務めた。アマゾンジャパンでは、一般企業では役員に相当するという経営会議メンバーとなり、さまざまな事業本部の本部長を歴任。18年にアマゾンを退社し、セミナー講師、コンサルティングを手掛けている。

   アマゾンの日本参入時、百貨店や量販店など小売店は歯牙にもかけず、オンライン化に力を入れるなどの行動を起こさなかった。そして、現在は...... 「圧倒的な差がついてしまっている。普通とは異なるものが入ってきた時に、ただ批判するのではなく、それを徹底的に分析し、自分たちの普通も変化させていかなければならないのに、それができなかった結果である」

   星さんによれば、アマゾンの「普通の基準」が、アマゾン以前に働いていた会社での経験で身につけた「基準」と異なることを痛感。そして、それがアマゾン急成長の原動力の一つでもあった。

   アマゾンの「普通の基準」は、創業者で社長のジェフ・ベゾス氏由来。それは「徹底した顧客中心主義」であり、これがアマゾンの普通の基準=基本理念として定着した。日本ばかりではなく世界のアマゾンで従業員一人ひとりに行き渡っている。顧客中心が普通のことであるアマゾンが、そうではないことを普通としている競争相手を置き去りに、先に行くのは当然の成り行きだったと星さんは言う。

   本書は、その「普通の基準」に基づくアマゾンの理念や思考、人材採用、人事評価、ガバナンスなどについて、内側から見て解説したものだ。

ベクトルとカルチャーを共有

   アマゾンの「普通の基準」は、組織の核心として数項目の規範として共有される。日本ばかりか世界各地で急成長しているアマゾン。新しく入ってくる人材が多く、従業員が世界規模で事業を展開する企業としてのベクトルとカルチャーを共有する必要があるが、そのためにあるのが「Leadership Principles(リーダーシップ・プリンシプル)」。社内では、冠に「Our(私たちの)」をつけ、それを略してOLPと呼ばれる。

   「Leadership」は「指導者の立場」「統率力」、「Principles」は「原則」の意味。かといって管理職に限定したものではなく、世界中の「アマゾニアン」を自称する全社員に対して「全員がリーダーであるべし」と促すもので、14項目から成る。

   それらは、「顧客中心の判断基準は妥協するな」「『それは私の仕事ではありません』は禁句」「常に創造性とシンプルさを求める」――など。ほかの項目では、高い水準、広い視野、スピーディーさ、倹約精神などを求めている。

   これらリーダーシップ・プリンシプルは、人材育成における大原則であり、採用基準にも大きくかかわっているという。また、これに行動ができているかどうかが人事評価での重要な評価軸の一つでもある。評価は3段階で、最高が「手本になった」という意味で「Role Model(ロールモデル)」、最低は「もっと発展が必要」という「Development needed」

   評価決定方法は、上司→部下の一元的なものではなく、直属の上司に加え、同僚や部下、仕事で関係した社内他部署の担当者など「360度からのフィードバック」が加味される。

   フィードバックには、いつ、どの場面で、どのリーダーシップ・プリンシプルが、どのように発揮されたのか、不発だったのかを具体的に書くことが求められる。必要に応じて、関係先から追加のフィードバックが取られることがあり、最終的には一人の社員について集まった十数人分以上の評価を総合して評価が決定される仕組みだ。

   機械メーカーや商社で、経営の経験を重ねた星さんだが、アマゾンで「自らの働き方を進化せざるを得なかったポイント」という、同社の「普通の基準」であるリーダーシップ・プリンシプル。日本の企業が見習い、あるいは、導入して実践を試みても簡単にはうまくはいくようにはみえない。だが、いいとこどりの応用は考えてみる価値はあるのかも。いずれにしても、いまをときめくトップ企業の哲学を知ることができる一冊。

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「amazonの絶対思考」
星健一著
扶桑社
税別1600円

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