2020年 4月 9日 (木)

嘆かわしいぞ、日産 ゴーン氏が導いた「自己利益優先」のインモラル体質の果て(大関暁夫)

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   年末年始のテレビワイドショーは、カルロス・ゴーン前日産自動車会長の不法出国の話題で持ちきりでした。

   楽器ケースの中に隠れて出国手続きを逃れたとか、プライベートジェットで関西国際空港の警備のスキを突いたとか、元グリーンベレーを含むプロの脱出コンサルタントに億単位の費用を払って脱出プランを依頼したとか......。

   続々明らかになるスパイ映画まがいの事柄に注目が集まり、事実以上にセンセーショナルな話題になっていることは確かなようです。

  • カルロス・ゴーン氏は日産自動車に大きなツケを残した(2014年撮影)
    カルロス・ゴーン氏は日産自動車に大きなツケを残した(2014年撮影)

モラルなき経営者は退場を余儀なくされる

   事実はと言えば、瀕死の日産自動車をV字回復させ、辣腕経営者とうたわれたゴーン氏が、独裁経営の果てに会社の私物化で逮捕され、我が国司法の審判から逃れようとプロを雇って不法な手段を使って海外脱出を企てた、ということ。やり口はいかにセンセーショナルなものであろうとも、不当行為、違法行為であることには違いなく、世界に冠たる大企業を動かしてきたプロ経営者にあるまじき、至ってインモラルな行動であると断言できます。

   いかなる理由があろうとも、インモラルな行動は経営者として失格です。もちろん経営者以前の問題としても、組織の私物化を疑われる身で禁止された海外渡航を正規の手続きを経ずして断行するという不法行為は即アウト。どんな言い訳をしようとも、疑惑追求から逃れるために起こした不法行動であると断罪されることは確実であり、あまりに愚かな行動であったとしか申し上げようがありません。

   モラルのない経営者は退場を余儀なくされるのが今の時代の常識です。日産自動車トップとして過去にいかに輝かしき実績があろうとも、プロ経営者としてのゴーン氏の価値はゼロになってしまったと断言できるでしょう。

   次に、改めて元日産自動車の経営トップの立場でのゴーン氏の責任の重さを考えてみます。まず、目先の問題で申し上げれば、組織の私物化により逮捕されたという事実が日産自動車に与えたブランドイメージの毀損は計り知れず、現実に日産は2020年3月期連結利益で前年比66%減少が予想されているというダメージを被っています。

   そのような流れにありながら、不法行為で追い討ちをかけることは、日産自動車にとってさらなるブランドイメージ毀損になることは確実です。その罪深さへの自覚なき今回の行動は、元日産自動車の経営トップとしても決して許されない行為であると言えるでしょう。

火を噴く日産「非常識」がまかり通る企業風土

   そしてもう一つ、元日産自動車の経営トップとしてさらに罪深いことがあります。今回ゴーン氏がカネで不法行為を買うようなインモラルな行動をする非常識な人間であるということがわかったことで、その彼が約20年の長きにわたって独裁的な経営を続けてきた日産自動車という会社の組織風土に及ばした悪影響です。

   インモラルな独裁者が経営トップに長年君臨することで、その下に仕える者はトップの非常識行動を常々目の当たりにすることで、トップがあそこまで勝手なことをやっているのなら自分も多少のことは許されるだろう、というモラルや常識に対する感覚がマヒしてしまうことになるのです。

   ゴーン氏が組織私物化による多額の私的流用を指摘され組織を追われた後に、そのあとを受けた西川廣人前社長もまた不正報酬疑惑で実質的に更迭されたことは、明らかにゴーン氏がつくりあげた常識を逸脱した組織風土が生んだ不祥事であったと言っていいでしょう。まさにゴーン氏の見えざる影響力が、そこには働いていたと見るべきなのです。

   さらに、2019年12月。新生日産自動車を揺るがす事件が起きました。

   12月1日に西川CEOの辞任を受け、ゴーン~西川時代の組織風土の払拭を掲げた新体制がスタートしました。外様の内田誠社長、ルノーのアシュワニグプタCOO、プロパーの関潤副COOの三頭分権による、権力集中排除体制の確立がうたわれていました。ところが、ここでまたゴーン時代から尾を引く日産自動車の非常識風土が火を噴きます。体制スタートから1か月もたたない同月25日に、三頭の一角でかつ日産プロパーでトップの関副COOが、他社への「転職」を理由に退職するという信じられない事実が発覚したのです。

   経営の一翼を担う関氏のあまりに身勝手な振る舞いは、日産自動車の復権をかけた新体制を根底から覆す、企業人の常識では考えられない異常な行動であるとあえて申し上げます。これもまた、ゴーン氏の振る舞いによって日産自動車社内(特に役員クラス)における自己利益優先のインモラルな行動の常識化が招いた悲劇であると思います。

京セラ創業者、稲盛和夫氏の言葉を聞け!

   組織における人の習性として、「部下は上司の背を見て育つ」は不変のセオリーです。どんなに優秀な上司であっても、ルールに甘い、常識やモラルに欠けるというような行動が見受けられるなら、その部下は一番受け入れやすい上司の弱い部分を真っ先にマネるものなのです。

   そして、マネられた上司は、自分にも思い当たる行動がある以上、部下の行動を指導・修正できず、いつしかそれは悪しき企業風土として組織に根付いてしまうのです。

   ゴーン氏のあまりのインモラルな正体が明らかとなった今回の不法出国劇。着任当初は日産自動車の救世主経営者として注目を集めたゴーン氏でしたが、その後の約20年のインモラルなトップによる独裁支配は、日産の組織風土にあまりに大きいツケを残してしまったと言えるでしょう。

   京セラ創業者、稲盛和夫氏は「人格を備えた経営者でなければ、企業は統治できない」と言っています。ゴーン氏が先導した日産自動車の惨状を見るに、今改めてすべての経営者が自問自答を促される言葉ではないでしょうか。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。 連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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