2024年 4月 26日 (金)

情報機関のインテリジェンスをビジネスに応用 「できる人」の未来予測テクとは......

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   本書「未来予測入門 元防衛省情報分析官が編み出した技法」は、陸上自衛隊で情報関係の任務を担当した著者が、実務で得たインテリジェンス分析の手法による未来予測のノウハウを「ビジネスパーソンにそれぞれの仕事の領域で役立ててもらう」ことを目的に筆をとった。

   「未来予測」は、単にリスク回避だけのためでははなく、リスクを把握することで、よりアグレッシブに行動するためのツール。グローバル化が進み、国際情勢と同じように複雑化するビジネス界でも極めて有効という。世界の情報機関が普通に使っている思考法や分析手法をアレンジすることで、ビジネスシーンに新たな地平が開ける可能性がある。

「未来予測入門 元防衛省情報分析官が編み出した技法」(上田篤盛著)講談社
  • インテリジェンスの技法を生かせば、見えなかった「未来」も見えてくる
    インテリジェンスの技法を生かせば、見えなかった「未来」も見えてくる
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「最良の準備」をすること

   未来予測の「技法」は、さまざまなバイアスに惑わされることなく客観的に物事を判断し、意思決定を行うための方法論。現代では、AI(人工知能)にビッグデータを解析させるだけでもっと確実に未来を予測でき、適切な対応策をとることも可能なことを著者は認めているが、テクノロジーだけで全面的にはカバーしきれないと断言する。

   テロリストが失敗すれば対抗策を講じるだろう。失敗がAIに予測されてのことなら、次から作戦前のデータに偽情報を入れて誤った判断を導こうとするかもしれない。あるいは、あらかじめAIの答えを把握し、その裏をかく作戦が展開される事態も考えられる。つまり、ビッグデータや統計学などは、未来予測では十分には意味をなさないのであり、人間による分析がなお必要とされる。

   分析の手法を理想的に実行できたとしてもなお、未来の予測は容易なものではない。ごく小さなひとつの変化により全体が大きく変わることもあり得る。また、人間にはポジティブな情報よりネガティブな情報に対しより敏感に反応する傾向があり、予測が無意識のうちに暗く悪い方向へ傾きがちという。未来に発生する科学技術上の「ブレークスルー」をなかなか想像できないことも予測を困難にしている要因の一つだ。

   これら未来予測を困難にしているハードルの存在が分かれば、その対処方法を考えて手順を練ることで予測の精度を上げることが可能。これが著者の主張だ。ポイントは、複数のシナリオを考えたうえでそれに応じた準備を行うこと。もともと「予測」が困難な未来。「未来予測」とは「言い換えれば『最良の準備をする』作業にほかならない」と結論づける。

   そこで本書では、自身で厳選した「未来を予測するための9つの分析手法」を紹介。それをもとに将来に向けたシナリオの作成を提案。複数のシナリオを用意して不測の事態に備えるべきと指摘する。

   そのうちの一つは「『問い』の再設定」。本書では繰り返して、未来予測では必ず「問い」を設定する作業から始まる??ということが指摘される。インフォメーション(情報)という素材を分析・加工してできあがるものが「インテリジェンス」というプロダクトなのだが、すべての情報分析は「質問=問い」の設定によりその方向性が決まるからだ。最初の「問い」は漠然としたものになりがち。だが、情報収集や分析がある程度進むと、最初の「問い」と異なった視点から見直し、別の「問い」に置き換えることも必要になるという。

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