新型コロナウイルスの感染拡大をめぐって、海外メディアが日本批判を強めています。引き金となったのは、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」から下船した乗客への日本政府の対応です。船上で隔離されていた約500人の乗客が、50か国にのぼる出身地に帰国することで「世界的な感染拡大の発生源になる」(英BBC)と懸念が広がっているからです。「山のような批判が向けられ」「安倍政権の対策は不発だった」と報じられています。日本は感染の「hotbed」!日本批判で「火だるま」ダイヤモンド・プリンセス号での感染者数が増えるにつれて、海外メディアが日本に向ける視線は厳しくなっていましたが、神戸大学・岩田健太郎教授のユーチューブ動画がさらに拍車をかけました。クルーズ船という「密室」のなかで何が起きているのか......。これまでもSNSを通じて発信する乗客はいましたが、感染症の専門家が流暢な英語で赤裸々に語る動画はよほど説得力があったのでしょう。瞬く間に世界中のメディアがトップニュースで取り上げました。さらに、下船後の乗客を隔離せずに「解放」した日本政府の判断が「安全なのか?」とさらなる不安を駆り立てて、堰を切ったように日本批判が広がっています。JapanletsCruisepassengerswalkfree.Isthatsafe?(日本はクルーズ船の乗客を自由に歩かせている。安全なのか?:米ニューヨーク・タイムズ紙)Japan'shandlingoftheoutbreakofCoronavirusonthecruiselinerhascomeunderfireafterpassengersweresuddenlydischarged(乗客が急に下船した後、日本のクルーズ船でのコロナウイルス感染対策が炎上している:英BBC放送)comeunderfire:非難にさらされる、鉄火を浴びる、炎上しているJapanfacesmountingcriticismforitshandlingofacoronavirus-afflictedcruiseship(日本は、コロナウイルスで苦しんでいるクルーズ船の対応をめぐり、山のような批判に直面している:Thestraittimes)mountingcriticism:山のような批判afflict:苦しめる、悩ます確かに、一気に「fire」(火)がついた「日本批判」は、「火だるま」とか「炎上」といった状況です。日本以外の多くの国が船内での隔離期間に実効性がなかったと見なして、下船した乗客を帰国後にさらに2週間隔離すると伝えています。そんななか、日本で下船した乗客たちが、「タクシー」や「バス」で自由に「解散」したことが、「あり得ない」という認識のようです。米ブルームバーグ通信は「日本が急速にコロナウイルスの温床になっている」という刺激的な見出しを掲げました。AsCasesMount,JapanIsRapidlyBecomingaCoronavirusHotbed(感染件数が増え、日本は急速にコロナウイルスの温床になっている:米ブルームバーグ)mount:上がる、昇るhotbed:温床残念なことに、海外から見ると日本は「コロナウイルスの『hotbed』」なのでしょうか。プリンセス号に乗船していた英国人夫妻は、メディアの取材に対して「クルーズ船内は『petridish』だった」と語っています。「petridish」(ペトリ皿)とは、微生物を培養するシャーレのことです。次々と明らかになる海外メディアの報道に、不安は増すばかりです。米ワシントン・ポスト紙は「日本の反応が鈍かった」海外メディアは、批判の矛先を日本政府に向け始めました。「petridish」(シャーレ)も「hotbed」(温床)も、日本政府がハンドリングを誤った結果だという見方です。ちょっと長いですが、米ブルームバーグの分析を紹介します。Japanisemergingasoneoftheriskiestplacesforthespreadofthecoronavirus,promptingcriticismthatPrimeMinisterShinzoAbe'sgovernmenthasmisfiredonitspoliciestoblocktheoutbreak.(日本は、コロナウイルスの拡大で最も危険な場所になった。安倍晋三首相の政府が感染拡大を阻止できなかった、いう批判が高まっている:米ブルームバーグ)emerge:躍り出る、現れるspread:拡大prompt:促す、刺激するmisfire:不発に終わるJapanesePrimeMinisterShinzoAbeandhisgovernmentwasthelatesttofeeltheheat(安倍晋三首相と彼の政府は、最もプレッシャーを感じるのが遅かった)feeltheheat:焦りを感じる、プレッシャーを感じるワシントン・ポスト紙は、他国の首脳と比較して、安倍首相と日本政府の反応が一番遅かったと報じていますが、これは大きなダメージでしょう。海外から見ると、地理的に中国に近くて多くの中国人を受け入れている日本政府は、どの国よりも早く対応すべきだと考えるのが普通です。ましてや、夏に東京五輪・パラリンピックを開催する国です。コロナウイルス対策に遅れをとったと見なされることは、致命的なダメージを与えそうです。それでは、今週の「ニュースな英語」は、「misfire」(不発)を使った表現をご紹介します。もともとは、銃や花火が「発火しない」「点火しない」という意味です。Agunmisfired(銃が発火しなかった)Fireworkmisfired(花火が点火しなかった)ジョークや提案、対策が「不発に終わった」という意味でも使われます。Myjokemisfired(私の冗談が不発に終わった)Myplanmisfires(私の計画は不発に終わった)海外メディアの日本政府批判が「comeunderfire」(炎上)して、「misfire」(不発)だと報じられるにつれ、「対策は正しかった」と主張する官邸との違いが浮き彫りになっています。「fire」(火)のないところに煙はたちませんから、海外メディアの日本批判はまだまだ加熱しそうです。(井津川倫子)
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