2024年 4月 26日 (金)

世界に広がる麻生大臣の「問題」発言! 「呪われている」のはオリンピックなの? それとも......(井津川倫子)

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   「東京五輪・パラリンピックは『呪われたオリンピック」――。麻生太郎財務大臣の、この発言が瞬く間に世界中に広がっています。

   麻生大臣といえば、これまでも数々の「問題発言」で物議を醸してきましたが、今回ばかりは「世界を股にかけて」超ド級のインパクトを与えてしまいました。

   一方、IOC(国際オリンピック委員会)や日本政府の「予定どおりの開催」に固執するスタンスには、著名アスリートからも「選手を危険にさらすな」「空気を読めよ!」といった非難が高まっていて......。何だか本当に「cursed」(呪われた)ムードが漂ってきました。

  • またもや麻生大臣が問題発言!「呪われている……」のは?(写真は2007年撮影)
    またもや麻生大臣が問題発言!「呪われている……」のは?(写真は2007年撮影)
  • またもや麻生大臣が問題発言!「呪われている……」のは?(写真は2007年撮影)

麻生発言は日本政府の努力をぶち壊した?

   麻生太郎財務大臣は、新型コロナウイルスの感染拡大で東京五輪・パラリンピックの延期や中止の懸念が高まっていることに関連して「呪われたオリンピック」と発言しました。まずは、この麻生大臣の発言が英語ではどう訳されたのかを見てみましょう。

It's a problem that's happened every 40 years - it's the cursed Olympics - and that's a fact,"
(40年ごとに問題が起きてきた。「呪われたオリンピック」だ。これは事実ですよ)
curse:のろい、呪う

   「呪われたオリンピック」は「cursed Olympics」と英訳されています。「curse」は「人などに災い・不幸がふりかかるようにと、呪う」という意味です。中世の魔術師が呪いをかけているような、おどろおどろしいイメージが浮かびます。

   「呪われている」のかどうかは別にして、40年周期でオリンピックが中止もしくはボイコットといった問題に直面してきたのは事実です。1940年の開催都市は夏季大会が東京、冬季大会は札幌で予定されていましたが、日中戦争の拡大で返上に追い込まれました。さらに、1980年のモスクワ五輪は米国や日本がボイコットして一部の参加国で実施したという経緯があります。

   この「呪われた五輪」発言を、各国のメディアが瞬時に報道。アッという間に世界に広がりました。

Forty‐Year Cycle: Top Japan Minister Calls 2020 the 'Cursed Olympics' (40年周期で訪れる。日本の最高位大臣が東京大会を「呪われたオリンピック」と発言した:ロイター通信)

Forty year 'curse' hits Tokyo Olympics
(40年周期の「呪い」が東京五輪を襲っている:Radio New Zealand)

   多くのメディアは、新型コロナウイルスの感染拡大で東京五輪・パラリンピックの中止や延期といった臆測が広まるなか、「必死に『通常開催』を主張している日本政府」の副首相の「問題発言」は、「波紋を広げるだろう」と否定的に報じています。

   少なくとも、大会開催の行方をめぐって不安な日々を送っている選手や各国のスポーツ関係者にとっては、配慮がない発言であることは間違いないでしょう。

「バッハ会長は空気を読んでない」

   そんななか、私が注目したのは、ニュージーランドの「Radio New Zealand」の記事です。麻生大臣の「呪われた五輪発言」だけでなく、菅義偉官房長官の発言も紹介して、本当の課題は何かを浮き彫りにしています。

   菅官房長官の「Japan is not making any preparations to postpone the 2020 Summer Olympics」(日本政府は、東京五輪を延期する準備はまったくしていない)とした発言を取り上げて、「stressing Tokyo's resolve to host the event as scheduled despite the global spread of coronavirus」(世界的なコロナウイルスの拡大にも関わらず、予定どおりにイベントを開催する東京の決意を強調した)と、伝えています。

   記事では、「日本がコロナウイルスの制圧に成功したとしても、他の国々が選手を派遣できなかったら意味がないだろう」「日本の状況だけで判断できる話じゃない」という麻生大臣の発言も紹介しています。

   コロナウイルスの爆発的な感染拡大で、生きるか死ぬかの状況を経験している海外の人々にとって、どちらの発言が非現実的に映るでしょうか。

   じつは、IOCや日本政府が「東京五輪は予定どおり開催する」と強気な態度を続ければ続けるほど、各国の関係者やアスリートから「現実的じゃない」との批判が高まるばかり。IOCのバッハ会長も「山のような批判が届いている」ことを認めているほどです。

   英国ボート界のレジェンドで、10個の世界選手権金メダルと4回連続のオリンピック金メダルを獲得したマシュー・ピンセント選手はツイッターで、「バッハ会長は『空気が読めていない』」と批判。オリンピックは「中止にすべきだ」と主張して話題になっています。

I'm sorry Mr Bach but this is tone deaf
(バッハ氏には申し訳ないけど、「空気が読めていないよ」)
tone deaf:空気を読む、音痴

   慌てた(?)バッハ会長は、急きょ、各国のアスリート代表や関係者にヒアリングを開始したとも報じられていますが、次のコメントに彼の苦渋がにじみ出ているように感じます。

No solution will be ideal in this situation
(この状況では、理想的な解決策などない)

   新型コロナウイルスの襲来という予測不能な事態に直面するIOCや日本政府関係者。オリンピックという巨大イベントのリスクが浮き彫りになっただけでなく、アスリートや人々の信頼も失ってしまったように思えます。

   「cursed」(呪われている)のは、東京大会ではなく、IOCやオリンピックそのものの存在意義ではないでしょうか? (井津川倫子)

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井津川倫子(いつかわりんこ)
津田塾大学卒。日本企業に勤める現役サラリーウーマン。TOEIC(R)L&Rの最高スコア975点。海外駐在員として赴任したロンドンでは、イギリス式の英語学習法を体験。モットーは、「いくつになっても英語は上達できる」。英国BBC放送などの海外メディアから「使える英語」を拾うのが得意。教科書では学べないリアルな英語のおもしろさを伝えている。
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