2024年 4月 19日 (金)

【どうなる!? 子育て】増える若年層の自殺 「学校」でなにが起こっているのか?(鷲尾香一)

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   厚生労働省と警察庁は2020年3月17日、2019年中における自殺の状況について発表した。自殺者数は前年比671人(3.2%)減の2万169人と2010年以降、10年連続で減少し過去最少を更新した。

   しかし、年齢階層別でみると、唯一19歳以下の自殺者が増加しており、改めて若年者の自殺増加が懸念される。

  • 若者層の自殺が増えている
    若者層の自殺が増えている
  • 若者層の自殺が増えている

自殺者、全体では減っているのに......

   自殺者の男女別では、男性が前年比212人(1.5%)減の1万4078人、女性が同459人(7.0%)減の6019人だった。男性の割合が68.6%と、女性の約2.3倍となっているが、男性は10年連続で減少している。

   自殺死亡率は10年連続低下し、16.0%と過去最小を更新した。男女別では、男性が22.9%、女性は9.4%で、男性は女性の約2.4倍となっているが、10年連続での低下となった。女性は初めて1ケタとなった。

   年齢階層別では、19歳以下を除き、各年齢階層で減少。30歳代は11年連続、40歳代、50歳代、 60歳代は10年連続で減少した。しかし、19歳以下では前年比60人(10.0%)増の659人となった。男性が同77人(21.0%)増の443人、女子が同17人(7.3%)減の216人と、男性が大幅に増加している。

   年齢階層別の自殺死亡率でも、60歳代は12年連続、40歳代、50歳代は10年連続、20歳代は8年連続、30歳代、70歳代、80歳以上は6年連続で低下しものの、19歳以下は前年の5.3%から5.9%に増加した。

   19歳以下の人口は1118万人と前年比で11万9000人も減少している点を考慮すると、この世代の自殺者数の増加は大きな問題と言える。

   そこで、若年層にスポットを当てて状況を見ていく。

学生・生徒の自殺の動機、多いのは学校問題

   自殺の原因・動機別自殺者数(以下、原因や動機は重複)で見ると、経済・生活問題は10年連続、家庭問題は8年連続、健康問題は6年連続で減少している。その半面、男女問題で前年比11人(1.5%)増の726人、学校問題で同1人(0.3%増)の355人と増加している点に、若年者の自殺増加の原因がうかがえそうだ。

   職業別の自殺者数では、「学生・生徒等」が前年比76人(9.4%)増の888人となっており、このうち19歳以下の516人(男性346人、女性170人)、20~29歳の354人(男性262人、女性92人)が多数を占める。

   「学生・生徒等」の内訳では、小学生8人(男性3人、女性5人)、中学生112人(男性65人、女性47人)、高校生279人(男性199人、女性80人)、大学生390人(男性283人、女性107人)、専修学校生等99人(男性69人、女性30人)の合計888人(男性619人、女性269人)。

   「学生・生徒等」の自殺の原因・動機別を見ると、もっとも多いのが学校問題で323人(男性241人、女性82人)、次いで健康問題205人(男性120人、女性85人)、家庭問題120人(男性75人、女性45人)、男女問題79人(男性44人、女性35人)の順。

   年齢階層別の原因・動機別自殺者数で見ると、男女問題は20~29歳が237人(男性130人、女性107人)と多く、次いで30~39歳の187人(男性121人、女性66人)となっており、19歳以下は63人(男性32人、女性31人)と少ない。

   半面、学校問題では19歳以下が202人(男性146人、女性56人)、20~29歳が144人(男性117人、女性27人)と圧倒的に多い。

   つまり、年齢階層別で唯一、自殺者数が増加している19歳以下では、「学生・生徒等」の自殺の原因・動機となっている「学校問題」が大きく影響している可能性が高い。もちろん、自殺の原因・動機は複合的なものであるため、「男女問題」が関係しているかもしれない。多感な時期をすごす「学生・生徒等」について言えば、男女問題も学校問題の一部になっている可能性もある。

   若年層の自殺という悲劇を減少させ、なくすためにも、家庭や学校はもとより、地域社会による、学校生活における学生・生徒への「目配り」は重要だ。(鷲尾香一)

鷲尾香一(わしお・きょういち)
鷲尾香一(わしお・こういち)
経済ジャーナリスト
元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで、さまざまな分野で取材。執筆活動を行っている。
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