みなさん、こんにちは。丸ノ内ミカです。新型コロナウイルスによる緊急事態が長引いていることで、これまで当たり前のように行われてきたさまざまなことに影響が出ています。働き方、経済活動、教育活動は言うに及びませんが、「厳密には緊急ではないけれども、当事者としては急を要するもの」の一つとしてクローズアップされているのが、「不妊治療」いわゆる「妊活」です。今回は「妊活」を通して、ココロの持ちようを考えてみたいと思います。就職、キャリア形成、結婚......計画どおりに歩いていた日本は「不妊治療大国」といわれるほど妊活が盛んですが、当事者の声はあまり表には出てきません。妊活をカミングアウトする人はごく少数。それだけセンシティブなことで、あれこれと周りに詮索されたくないというのは、女性としてはごく自然な心理なのです。でも、そのような内容だからこそ、その心理の奥を探れば、その女性のアイデンティティにまで行きつくほどのホンネが出てきたりもするのです。今回、「自分の経験が読者の参考になれば」と、激動の時代を生き残るためのスキルを策定していく「丸の内サバイバー女子会」メンバーのY香さんが取材に応じてくれました。Y香さんは大学卒業後、大手金融会社にキャリア職として入社。バックオフィスである総務系の部署で内部管理業務を担当。華々しいキャリアではありませんが、それでも30代半ばまで大きな挫折もなく、キャリア人生を邁進してきました。結婚は35歳の時ですが、それも前々からライフプランを戦略的に練ったうえでの、「あえて」の35歳だったといいます。20代で結婚・出産するのは、キャリア形成の上ではリスクが大きいと判断。34歳くらいまではキャリアアップや自己投資に時間を使い、35歳をメドに結婚。そして出産と「計画した」そうです。「会社には、42歳で初産だった先輩もいたので、30代後半で結婚しても、妊娠にはなんら問題ないと思っていました」Y香さんは子供の時から、締め切り日から逆算して宿題をやるような計画的なところがあり、学歴も、仕事も、結婚も、すべて手堅くやってきたので、「『妊娠出産』もうまくいくものと信じて疑っていませんでした」。見えない誰かと闘ってきた?ところが、35歳まで順調だったY香さんの人生に異変が生じます。すんなり行くはずと思っていたのに、なかなか妊娠しないのです。仕事を少しずつセーブし、飲み会とかの付き合いも控えるなど、いつ妊娠しても差し支えないように、気をつけていたというY香さん。36歳になっても、まだ崖っぷち感はなく、おかしいなと思い始めたのは結婚して2年が過ぎた頃とのこと。毎夏、定期的に受診している会社の人間ドックの問診で、不妊症の可能性を指摘され、すぐに近くの婦人科に駆け込んだとのことでした。「私が不妊症?」――。Y香さんは、37歳の人生で初めてといってもいいほどの、現実を突きつけられることになります。「正直、ショックでした。夫は、『無理して不妊治療なんてしなくてもいいよ』と言ってくれたのですが、私はどうしても子供が欲しかったので、私の意志で治療に踏み切りました。でも、治療は想像を絶するほどの大変さでした。正直、今でも当時のことは思い出すのがつらいです。職場の理解もあって、仕事はなんとか辞めずに済みましたが、毎年のボーナスは全部不妊治療の費用に出ていきましたし、身体的負担も相当なもので、あの期間は仕事しているか自宅で寝ているか、という生活でした」結局、Y香さんは7年間不妊治療を続けましたが、二度の流産も含めて出産に至った妊娠は一度もないまま、44歳で不妊治療をやめました。治療にかけた費用は、総額で1000万円近くまでのぼったそうです。受験勉強みたいに不妊治療を頑張っていた現在、Y香さんは47歳。Y香さんに、なぜ不妊治療を7年も続けたのか、聞いてみました。「それまでの人生で、勉強も仕事も結婚も、全部計画して、努力して手にしてきたので、納得いかなかったというか。努力して叶えられないことなんてないと思ってきたんですよね。でも、やっぱりみんなが言うように『授かりもの』なのかなぁって思ったりします」と、話してくれました。そして、「私、どうして子供が欲しかったんだろうって考えました。本当に子供が欲しかったっていうよりも、子供も仕事も手に入れている人に負けたくないとか。親に認められたいとか。なんか周りの目を気にして、周りの評価軸に惑わされて、受験勉強を頑張るみたいに、不妊治療を頑張ってしまっていたのかもしれません」と、こぼしたのです。おそらくY香さんは今でも、子供を授からなかった現実を受け止めきれず、また納得できていないのかもしれません。しかし、薄々は気づいているのです。周りの目を気にして自分を飾ったり、駆り立てたりしても、必ずしも思いどおりにならないことがあるということを。子供は「授かりもの」といいますが、授かりもの=「神仏や目上の人などから与えられる、金では買えない大切なもの」には、いろいろあります。その一つが、その人が歩んできた人生、つまり経験・体験、生き方ではないでしょうか。確かに子供は授かりものですが、Y香さんのように、子供を持とうと努力したこと、その結果子供を持てなかったことも、一生懸命生きた軌跡、経験という意味ではこの体験もまた「授かりもの」ともいえるのです。いつの時代も、女性にとっては妊娠や出産は大きなライフイベントですが、Y香さんのように、望んでいてもやむを得ず断念せざるを得ない場合はあります。周囲がどんなに慰めても、そう簡単には気持ちを切り替えられないことはあります。しかし、どんなときでも幸せに生きていけるよう、賢いサバイバー女子の皆さんは、自分が歩んできた道を、自分にしかできなかった経験を、そして未来を「胸を張って」語ってほしいと思うのです。【きょうの格言】「授かりもの」の意味を噛みしめる。計画どおりに行かないのが人生だ!それでは、また次回!(丸の内ミカ)
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