2024年 4月 25日 (木)

求人ビッグデータのゴーリスト、コロナ禍で存在意義確認し一転、広報強化

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   独自のビッグデータ収集・分析による人材情報サービスを手がけ成長を続ける株式会社ゴーリスト(東京都千代田区)は、新型コロナウイルスで、いち早く全社テレワーク体制を敷き注目を集めた。

   同社は経営戦略として情報発信を控えめにした「隠密経営」を旨としていたが、2020年からその方針を180度転換して広報体制を整え、そのプロローグ的な発信の一つがテレワークについてだった。加藤龍社長に、なぜカミングアウトすることにしたのか聞いた。

  • 「ステルス経営」から「表に出る」ことに転換したというゴーリストの加藤龍社長
    「ステルス経営」から「表に出る」ことに転換したというゴーリストの加藤龍社長
  • 「ステルス経営」から「表に出る」ことに転換したというゴーリストの加藤龍社長

なぜ、「ステルス経営」をやめたのか?

   加藤社長は、2019年までの発信控えめのオペレーションについて、戦闘機などに搭載されレーダーに捕捉されないようにする技術にたとえ「ステルス経営」と呼ぶ。

「戦略的な理由からこれまでは、ステルスで会社を経営していまして、取材も断りできるだけ目立たないようにしていました」

   カミングアウトすることにした大きな理由の一つは「戦略的な理由」がなくなったから。新型コロナでは、その判断が間違っていなかったことを確信したという。

   加藤社長がゴーリストを起業したのは2011年1月。それまで約10年間勤務した人材派遣の会社を辞め、たった一人で起業した。21年が明けて早々に迎える「10周年」を節目として「そろそろ取材も受けながら認知度を上げていく」ことを考え、20年はその「元年」の位置付けだ。

   ゴーリストの主な業務は、さまざまな求人情報媒体などがウェブサイトに掲載している求人情報を集約、独自の技術で分析すること。顧客企業のニーズに応じたカテゴリーに分類して提供する、いわゆるビッグデータビジネスを行っている。

   技術的困難の克服、提供を考えた情報のニーズの見極めなどで試行錯誤を繰り返しながら起業後3年ほどしてから事業は軌道に乗る。2015年に50社だった顧客企業は19年には3倍に。データの累計件数は15年に4億件ほどだったが2020年に24億件を超えた。

   創業10周年を控え、加藤社長がステルス経営を脱しようと考えたのは、人材市場でのビッグデータビジネスという分野で競合相手がなく独走態勢を築くことができたからだ。

   同社のビッグデータビジネスの支えはクローリングという情報収集の手法と、求人媒体が公開している情報。そこに鉱脈があることが知られればマネをされる可能性がある。それを避けるために「ステルスでコツコツとやっていた」。

「起業当時からデータは溜めたもの勝ちだと思っていました。仮に大きな会社が今から始めても今からのデータしか取れない。これまで24億件データが蓄積され、この8年くらいの日本の求人事情についていちばん知っているのはうちの会社になります」

「日本の求人事情をいちばん知っている」

   この「日本の求人事情について、いちばん知っている」ことが、新型コロナがもたらした社会の変化の中で、非常に有意義なことがわかり、このことがまた、カミングアウトをする加藤社長の背中を強く押した。

   コロナ禍で業種により差があるものの、さまざまな業界にダメージをもたらし、雇用や求人への影響が注目されている。そうしたなかでゴーリストが持つデータや情報は他にはないもので、そのことが顧客である企業を通じて知られるようになり、グンと引き合いが高まった。

   経済産業省など官公庁や政府系機関、金融機関からの問い合わせが増加。「コロナで雇用がどうなっているのか、地方の求人はどれだけ減っているのかというのを知りたいと詳細なデータを求められています」と加藤社長。約300ある国内の求人情報媒体の掲載情報を定期的に巡回収集し蓄積しており、業種別、地域別、報酬別に分析でき、さらにそれらを期間別で比較することもできる。コロナをきかっけに、その有意性に対する認識が広がった。

   同時に、加藤社長は「公的に認められるような会社になりつつあるかなと感じます」というように、コロナ禍で、自身もゴーリストの存在意義を改めて認識。より強く「表に出よう」と思った。

   コロナ禍の求人市場の大きな変化は、リーマンショック(2008年)以来のこと。そのため、ある政府系機関からはリーマンショック前後との比較データを求められたが、当時は起業前。だが、この問い合わせを受け、加藤社長は、自ら手がけるビッグデータビジネスについて「過去のデータもビジネスになるということを確信した」という。

先見性発揮、いちはやくテレワーク導入

コロナによる感染拡大でいち早くテレワーク対応
コロナによる感染拡大でいち早くテレワーク対応

   求人情報産業や人材派遣などの業界では、他の産業界と同じく、競ってIT化を推進しているが、加藤社長が人材派遣会社でキャリアをスタートした20年ぐらい前は、ITが導入されていても、いまのようにイノベーションのステップとして考えられるようなことがなかったという。

   そうした環境の中で、アップル創業者のスティーブ・ジョブズ氏やマイクロソフトの創業者であるビル・ゲイツ氏の軌跡に興味を持ち、米国のブログなどで同国の人材情報産業でビッグデータビジネスやオウンドメディアが成功していることを学ぶ。そして、そのうちの一部は会社勤務時代に、乗り気ではない経営幹部を説得して実務化して成功させ、社内ではIT化の立役者にもなった。

   若い頃は漫才師を目指したこともあったが、向いていないことがわかり実務を志す。大学4年の時に就職活動で内定を受け、卒業を目前に中退して人材派遣会社に就職。生来の行動力で実績を挙げ、子会社社長、本社のIT担当の部長として同社にはなくてはならない存在となったが、起業志向を止められず独立した。

   先を見通して行動することは起業後も不変。コロナ禍ではいち早く2月半ばに全社フルテレワークを宣言。自らは「トップがのんびりしていてはいけない」と自家用車を売却して、自分はいつでも出社できるようにと東京の本社近くに引っ越した。

   2015年から始めた新卒採用では、コロナの感染拡大をみて、こちらもフルリモートでの対応に転換。入社について「3月31日まで辞退OK」など、いわばなんでもありの「自然体」ということから「すっぴん採用」と銘打って実施した。

   2021年に迎える10周年について問うと「次のチャレンジの年」と即答。「どこの会社にいっても通用する人材を育てる会社なので、分社もありと考えています」。また、農業への参入を真剣に考えていると付け加えた。

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