「忖度ナシ」尾身茂会長に菅首相が激怒? 感染拡大真っ最中に「政府VS分科会」やっている場合か!(2)

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   新型コロナウイルス「第3波」の襲来で、感染拡大の歯止めがかからない。新規感染者数だけでなく、死亡者と重症者が過去最多ペースで増加しているのが特徴だ。

   そんななか、GoToキャンペーンを継続して経済活動を優先しようとする政府と、一時停止して感染拡大防止を優先させるべきだとする政府の感染症対策分科会(尾身茂会長)の「暗闘」が明るみに出た。

   いったいどうなっているのか? 両者が争っている場合だろうか? 主要メディアの報道で読み解くと――。

  • 「勝負に出た」尾身茂分科会会長(2020年6月、日本記者クラブの会見動画)
    「勝負に出た」尾身茂分科会会長(2020年6月、日本記者クラブの会見動画)
  • 「勝負に出た」尾身茂分科会会長(2020年6月、日本記者クラブの会見動画)

専門家の極秘会談を積み重ね、勝負に出た尾身氏

   さて、こうした政府VS分科会の暗闘をより詳しく報じているメディアがある。週刊文春(12月3日号)「総力特集 冬コロナ襲来 菅 〈GoToおじさん〉『コロナ無策』を暴く」が4ページにわたって取り上げている。

   記事では冒頭、3連休最終日の11月23日、東京・赤坂の国際医療福祉大学のビルに「専門家」が集まる様子が書かれている。分科会会長の尾身茂氏、会長代理の脇田隆字氏、岡部信彦氏(川崎市健康安全研究所所長)らだ。彼らは政府の分科会とは別に独自に「極秘会談」を重ねてきた。この日の議題は「GoToの運用見直し」。そして、出席者からこんな発言が飛び出したという。

「これでは不十分だ。首相には危機感がない!」

   11月に入り、北海道を中心に感染が拡大し始めたが、安倍晋三前首相の時にスタートした専門家会議は今年7月に廃止され、政府の助言組織に組み替えられた。

   政権に批判的だったオブザーバーの「8割おじさん」こと西浦博京大教授もメンバーから外され、代わりに経済専門家たちが入ってきたことで、「政府の追認機関になりさがった」(新聞社政治部デスク)などの批判が出ていた。

   その批判は尾身氏の耳にも入っていた。尾身氏にも「公衆衛生の専門家としての矜持があった」(厚労省関係者)。だからこそ医療専門家だけの極秘会談を重ねてきたのだ。こうして11月20日、「官邸と分科会のいちばん長い日」が始まった。尾身氏が午前、西村経済再生担当相に、

「医療崩壊が差し迫っています。このまま感染拡大が続けば、結果として経済が回らなくなり、五輪開催にも影響しかねません。GoToを見直すべきです」

と進言した。

   その一方で、尾身氏は強硬突破にも打って出て、同日夜に分科会を開催したうえで記者会見を開き、「提言」を公表したのだ。分科会出席者が、議題の文案を見たのが会議の直前という念の入れようだった。官邸に提言を骨抜きにされる隙を与えないためだった。

   西村氏と加藤勝信官房長官が菅首相と向き合い、GoToの見直しを説得した。GoToは菅首相自らが旗振り役を務めたキャンペーンだ。なかなか首を縦に振らなかった。菅首相は、側近にこういら立ちを示したという。

「なんでそんなことを言うんだ。専門家なのにエビデンス(科学的根拠)がない。だいたい(スーパーコンピューターの)富岳の計算でもマスクをつければ大丈夫だ」

まだ第2弾がある「政府VS分科会」の暗闘

GoToトラベル(写真はイメージ)
GoToトラベル(写真はイメージ)

   とはいえ、最後は「専門家の提言」を受け入れざるをえなかった。しかし、週刊文春は、政府VS分科会の暗闘はまだまだ続くという。それが冒頭に紹介した「官邸と分科会のいちばん長い日」の3日後に再び開いた極秘会談だ。会議での、「これでは不十分だ。首相には危機感がない」という発言が、菅首相への第2弾というのだ。

   じつは、提言は「GoToの見直し」などについて、もっと厳しい内容が盛り込まれていた。だから「不十分だ」というわけだ。

   朝日新聞(11月28日付)の「社説:コロナ第3波 医療現場に支援厚く」は、政府と専門家が「対話不全」を続けている暇などない、としてこう訴えた。

「分科会がトラベル事業の一時停止を提言した。だが政府は応じず、取材に応じた菅首相は、記者の質問から逃げるように立ち去った。所信表明演説で『爆発的な感染は絶対に防ぐ』と表明しながら、首相は経済活動の維持に軸足を置いてきた。難しい判断であることはわかる。だが、感染拡大の兆しを見つけたらまずは封じ込めを優先し、状況が落ち着いてから少しずつ活動を再開する。それが経済にも好影響を与える。春と夏の感染拡大で学んだ反省や教訓が生かされているとは思えない。待ったなしの課題だ」

(福田和郎)

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