新型コロナウイルスの影響が広がるなか、ここ数年の深刻な人手不足は政府の緊急事態宣言による人の外出や移動の自粛や、休業要請で一たんは大幅に緩和したものの、GoToトラベルキャンペーンなどの景気刺激策に伴い、「旅館・ホテル」が再び人手不足に頭を痛めていることがわかった。帝国データバンクが2020年11月24日に発表した。
調べでは、全体をみても10月時点で「正社員が不足している」と回答した企業割合は約3割で、6月以降に徐々に増える結果になった。
「正社員不足」5月に底打ち
調査によると、2020年10月時点で「正社員が不足している企業」は全体で34%。前年同月に比べると16.1ポイント減り、かなり低い水準にある。19年までは深刻化が懸念されていた人手不足が大きく緩和したことが示された。 正社員不足の企業は、1月は49.5%だったが、コロナ禍の感染拡大とともに急減。しかし、5月(29.1%)に底を打ち、6月に30%台となって以降は徐々にではあるが増加傾向にある。
正社員が不足している企業を業種別にみると、最も高かったのが「教育・サービス」で62.5%。前年同月と比べて8.0 ポイント増えた。コロナ禍でオンライン授業が増え、その業務を担当する人員の需要が増加した。同様にテレワークの拡大などで需要が増した「電気通信」が60.0%で前年同月より23.6 ポイント増と高い水準。「家電・情報機器小売」も52.8%で、12.2ポイント増と5割を超えた。
帝国データバンクでは、コロナ禍の影響で深刻な打撃を受けた「旅館・ホテル」の動向に着目。4月以降の外出や営業自粛で倒産や人員削減を進めていたが、国のGoToトラベル事業が本格化した8月以降に大幅増となり、10月の人手不足の企業の割合は40.5%と4割を上回った。人手不足を感じている「旅館・ホテル」が、少しずつ増加している。
一方、「正社員の人手が過剰」と答えた企業を業種別にみると、最も「過剰」だったのはイベントの中止・延期によってポスターなどの需要が減少した「出版・印刷」で43.8%。前年同月の19.9%より大きく上昇した。次いで、自動車関連の「輸送用機械・器具製造」が42.5%で4割台だった。
非正規雇用「家具類小売」の4割超で人手不足
また、非正社員の人手が「不足している」と回答した企業は 19.0%で、2019年10月と比べて10.3ポイント減。12年10月(15.8%)以来、10月としては8年ぶりに2割を下回った。
正社員と同様に、5月(15.2%)を底に緩いペースで増加傾向にある。業種別にみると、「家具類小売」が43.8%(前年同月比25.6ポイント増)で最も高かった。「飲食料品小売」(41.8%)と「メンテナンス・警備・検査」(41.7%)が4割台で続くが、いずれも前年同月と比べて減った。前年同月より増えたのは「電気通信」(7.5ポイント増)で、37.5%と高い割合だった。規模別では、特に小規模企業で人手不足の増加が目立つ。
一方、人手が過剰と答えた企業は、アパレル関連を含む「繊維・繊維製品・服飾品製造」と「飲食店」(ともに36.4%)が最も高かった。
厚生労働省によると、新型コロナウイルスの影響による解雇やその見込みがある労働者数は7万1121人(11月13日時点)で、ペースは鈍化しているものの増加が続いている。
なお調査は、全国2万3695社を対象に10月19日~31日に実施。有効回答は1万1448社(回答率は48.3%)。帝国データバンクは2006年5月から毎月、雇用の過不足状況を調査している。