2021年 5月 11日 (火)

日銀はなぜ異次元緩和の道にはまったのか?

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   ゼロ金利、量的緩和、インフレ目標、政府との共同声明、そして異次元緩和......。異例ずくめの日本銀行の金融政策の背後で、どのような議論や駆け引きが行われていたのか。

   本書「日銀漂流」は、1998年の日銀法施行以来、蜃気楼のような「独立性」を追い求めて、後退戦を余儀なくされてきた歴代総裁の苦闘の軌跡を長期間の取材で描いたドキュメントである。

「日銀漂流」(西野智彦著)岩波書店

   著者は時事通信社、TBSで経済記者として長く日銀、大蔵省などを取材したジャーナリストの西野智彦さん。「アベノミクス」とともに日銀の異次元緩和が続いているが、将来、子や孫たちが金融経済で想像以上の苦境に直面し、「なぜ、こんなことになったのか」と疑問を抱いたとき、その答えを探す糸口を残しておいた方がいい、と本書を書いたという。

   将来の検証に供するため、論評を控え、事実を時系列にそって書いている。当事者への取材のほか、公開・未公開の内部文書や個人の日記、忘備録などをもとにした。この四半世紀の日銀の総裁人事や政策決定の舞台裏が見えてくる。

   この間の5人の日銀総裁の名前を冠して、それぞれ1章を設けている。

第1章 「松下時代」日銀法改正と金融危機 1996~1998
第2章 「速水時代」独立性という陥穽 1998~2003
第3章 「福井時代」反転攻勢、量の膨張と収縮 2003~2008
第4章 「白川時代」危機の再来、政治との確執 2008~2013
第5章 「黒田時代」ゴール未達、そして漂流 2013~
  • 日銀の「独立性」とは……(写真は、日本銀行本店)
    日銀の「独立性」とは……(写真は、日本銀行本店)
  • 日銀の「独立性」とは……(写真は、日本銀行本店)

日銀法は改正されたが......

   1997年の日銀法改正に遡って本書は始まる。昭和17年につくられた旧法は戦時立法で、そのまま戦後まで続いていた。大蔵省には日銀に対し一般的な業務指揮権と総裁解任権があり、大蔵省が最強の官庁であることの象徴でもあった。

   「金融政策に対する介入を法的に遮断し、独立した中央銀行に生まれ変わりたい」。日銀マンの誰もが日銀法の改正を願ってきた。そのチャンスは意外なところから到来した。

   バブル崩壊後に大蔵省主計局幹部への過剰接待が発覚。そこに住専処理への税金投入という案が飛び出し、大蔵省批判に火がついた。日銀法改正は大蔵省の権限縮小にもつながる「手ごろなテーマ」だったため、政治的な思惑で浮上したのだった。

   「独立性」という当初のキーワードは消え、代わりに「自主性」という言葉が使われた。55年ぶりの日銀法改正だったが、元総裁で当時顧問の三重野康は「一番大事なことが書かれていないじゃないか」と怒ったという。日銀の国債引き受けを禁止する規定がなかったからだ。中央銀行の独立性のうち、最も重要な財政ファイナンスの禁止が明記されていない、と部下を叱責した。

   いま、コロナ禍で日銀が国債買い入れ枠を撤廃してまで、買い入れている現状を、泉下の三重野が知ったら、どう思うだろうか。

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