2024年 4月 20日 (土)

「メンツが立てばやめる」ってホント? 英紙が五輪中止決定報道 政府が否定も「納得できない」の声

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「日本政府はすでにオリンピック中止の結論を出している」

   コロナ禍で、2021年7月の東京五輪・パラリンピックの開催が危ぶまれるなか、英国の有力紙が衝撃の報道をした。政府や五輪組織委は「中止」で動いており、あとは、

「日本のメンツを立てて中止発表する方法を模索している」

というのだ。

   政府と組織委は即座に報道を「否定」したが、いったいどうなっているのか。外国メディアを含め、主要メディアの報道を探ると――。

  • 「無観客」でも開催を強行したい(?)バッハIOC会長
    「無観客」でも開催を強行したい(?)バッハIOC会長
  • 「無観客」でも開催を強行したい(?)バッハIOC会長

日本政府「2032年五輪ホストでメンツを立ててくれれば」

   IOC(国際オリンピック委員会)と日本政府との間で、ひそかに東京五輪を中止し、2032年の開催を目指す道を探っているという衝撃的なニュースを報じたのは、英国の高級紙「ザ・タイムズ」だ。1月21日付に「Japan looks for a way out of Tokyo Olympics because of Covid」(日本は新型コロナウイルスのために東京五輪からの逃げ道を探している)という見出しで、こう報じたのだった。

「日本政府は内密に新型コロナのために東京五輪を中止しなければならないとの結論を出した。目下の焦点は、(パリ、ロサンゼルスの)次に開催枠が空いている2032年の五輪大会を確保することにある」

というのだ。さらに、こう続ける。

「連立与党の古参議員の一人によると、すでに1年延期されている五輪大会の開催は、もう絶望的だということで意見が一致している。現在の焦点は東京都が後日、五輪を主催できる可能性を残す形にして、メンツを保ったまま中止を発表できる道を探し出すことにある」

という。

   同紙に情報を提供した「与党の古参議員」は、こう嘆息したという。

「誰もそれ(中止)を最初に言い出したがらないが、開催することが困難過ぎるという点では、ほぼ意見は一致している。私個人としても五輪が開かれるとは思わない」
真っ黒の写真で東京五輪がなくなったことを報じた米ニューズウィーク誌(2021年1月21日付電子版)
真っ黒の写真で東京五輪がなくなったことを報じた米ニューズウィーク誌(2021年1月21日付電子版)

   東京五輪の後は2024年にパリ、2028年にロサンゼルスの開催が決まっている。現在、水面下で行われているのは、まだ開催地が決まっていない2032年に、日本がホストになって東京五輪を開くことを、日本政府・東京都・五輪組織委としてIOCから確約を得たいということらしい。

   このニュースの真偽は不明だが、「ザ・タイムズ」は英国で1785年創刊された世界最古の日刊新聞であり、信頼度は極めて高い。ザ・タイムズの情報を引用する形で、ロイター、AP通信など海外の多くの有力メディアが「東京五輪中止に」と一斉に報じた。

   米ニューズウィーク誌は「2020Tokyo Summer Olympics Close to Total Cancellation」(2020年夏の東京五輪、完全キャンセルに近づいた)という見出しに、「もう終わった」ことを示すために真っ黒の写真を付けるありさま=上の写真。AFP通信は「Japanese government: Tokyo Olympics on thin ice because of covid」(日本政府、コロナのために東京五輪を薄氷の上に)と、日本政府が五輪を投げ出したと伝えた。真偽はともあれ、欧米の競技団体をはじめとするスポーツ関係者に与える影響は大きいだろう。

バッハIOC会長「すべての選手は東京に来たがっている」

   このザ・タイムズの報道に対して、東京五輪・パラリンピック組織委員会は1月22日、真っ向から否定するコメントを発表した。

「政府においては、菅義偉総理が大会開催への決意を示しておられ、大会開催のために徹底的なコロナ対策を講ずることを主導いただいている。政府、東京都、組織委、IOC、IPC(国際パラリンピック組織委)などすべての関係機関が、安全で安心な大会開催実現に向けて準備に尽力してまいります」

と、菅首相の決意を強調。その政府も内閣官房が、

「日本政府が東京大会の中止を非公式に結論付けたとの旨の報道がございましたが、そのような事実は全くございません。現在、大会関係者が一丸となって準備に取り組んでいるところです」

と、報道を否定するコメントを発表した。

   一方、こうした報道に先手を打つつもりだったのか、トーマス・バッハIOC会長(67)は、ザ・タイムズの報道と同じ頃の1月21日、共同通信のインタビューに応じて、「あくまで開催する」と強気の姿勢を貫いた。共同通信(1月21日付)「東京五輪の中止、再延期を否定 IOC会長『代替案ない』が、こう報道する。

「バッハ会長は東京五輪について『7月に開幕しないと信じる理由は現段階で何もない。だからプランB(代替案)もない』と述べ、中止や再延期の可能性を否定した。感染力が強い変異種の拡大で悲観論が広がる状況にも、『(延期を迫られた)昨年とは比べられない。すべての選手が東京に来ることを望んでいる』とし、ワクチン接種を含む予防策に自信を示した」

というのだ。

   その一方で、

「安全が最優先という点でタブーはない」

とも語り、無観客や観客数を減らして開催する可能性は否定しなかった。そして、最終的な「観客数の判断」の時期については、

「3、4月が非常に重要になる。6、7月まで待てない」

と語ったのだった。

「日本政府は中止の結論を出した」と報じたザ・タイムズ紙(2021年1月21日付電子版)
「日本政府は中止の結論を出した」と報じたザ・タイムズ紙(2021年1月21日付電子版)

   その「観客数」について、「無観客」から「無制限」まで3つの案を政府や五輪組織委が検討していると報じるのは日本経済新聞(1月22日付)「東京五輪、無観客含む3案想定 『上限なし』『50%』も IOC検討要請」だ。

   それによると、

「今夏に延期された東京五輪・パラリンピックの観客数の上限を巡り、政府や大会組織委などが『上限なし』『50%』『無観客』の3つのシナリオを現時点で想定していることが大会関係者への取材で分かった。IOCから複数のケースを検討するよう要請があったという」

ことだ。

   1月に入り、首都圏に緊急事態宣言が出されたことが大きい。大会開催の懐疑論が国内外に強まるなか、感染状況をにらみながら検討を進める。無観客開催については、900億円も見込むチケット収入が失われるうえ、東京五輪でインバウンド(訪日外国人旅行客)需要による経済効果を当て込んでいた政府内でも慎重論が強い。

   しかし、日本経済新聞は、

「IOCの最古参委員、ディック・パウンド氏は大会が中止になるより、無観客の開催が妥当との意見を示していた」

と結んでいる。

   東京都医師会の尾崎治夫会長が、「東京五輪を開催するなら、ぜひ無観客で」と、朝日新聞のインタビューで訴えた。

   朝日新聞(1月22日付)「『五輪、無観客の検討を』都医師会長、医療逼迫(ひっぱく)を懸念」によると、大会計画では、医師や看護師ら計1万人以上が競技場や周辺の救護所に待機し、選手や観客の医療にあたることになっており、新型コロナウイルスの感染爆発によって、東京の医療体制が崩壊寸前のいま、そんな余力はないと、尾崎治夫会長は訴えたのだ。

「新型コロナ対応が長期化するなか、病院スタッフは疲弊し、PCR検査や自宅療養者の支援などで診療所の負担も大きい。いろんな国から人を呼び、世紀の祭典をやろうという発想は捨てないと無理。しかし、選手のことを思えば、開催できたらいい。五輪の本来の目的は、選手が集まり、競技できることでしょう。そこに目標を置くなら、無観客から議論を始めるべきです」

と強調したのだった。

「政府が本気で開催を目指すなら国民投票で決めてほしい」

コロナに勝った証に開催すると強調する菅義偉首相
コロナに勝った証に開催すると強調する菅義偉首相

   東京五輪の開催の賛否について、世論の意見はどうか。テレビ朝日が1月18日に発表した最新の世論調査によると、「中止」(48%)、「さらに延期」(37%)と開催に「反対」が85%で、「開催」は11%にとどまった。共同通信が1月11日に発表した調査でも「反対」が80.1%、「開催」は14.1%だけだった。

   ネット上では、ザ・タイムズなど海外メディアの報道について、こんな意見が多かった。

「ザ・タイムズの報道の真偽は不明だが、現時点では開催が困難な状況なので、中止はやむを得ないでしょうね。ただ11年後を目指すというのは、それまでオリンピックの開催意欲が国民にあるかどうかは疑問です。コロナ過が過ぎた後の世界の状況が大きく変わっているし、経済状況も不透明化していますから」
「2032年開催プランが妥当かは別として、東京五輪は延期または中止すべきです。延期の場合は人類が新型コロナに打ち勝った証を示せるまで延期すべきですが、2032年では冷めたピザになるでしょう。オリンピックが巨大になりすぎて、商業主義に陥っているので、規模を小さくするなどオリンピック自体を見直す時期に来ていると思います」
「これが事実なら、ぜひともそのとおり中止して頂きたい。これがフェイクニュースで日本政府がまだ本気で開催を目指しているなら、オリンピック開催可否について国民投票をしてほしい。100%中止になると思う。これが民意。この状況で民意を無視した開催など絶対しないでほしい」
「失言の多い麻生太郎氏だけど、『呪われた五輪』発言だけは同意する。パクリ問題から始まり、マラソン札幌開催とか、あまりにもブレブレな計画が批判されたうえでのこのトドメのコロナ。さらにまた何か起きそう。2032年ったら、12年周期で経済危機が起こるとされる『ねずみ年』。絶対ロクなことにならなさそう。もうやめようよ」
東京五輪・パラリンピックの開催は......(写真は、新国立競技場)
東京五輪・パラリンピックの開催は......(写真は、新国立競技場)

   また、「無観客」でも開催を強行しようとする政府やIOCの姿勢については批判の声が多かった。

「いつの間にかワクチン打たなくても実施できるのが正論になっているのは何故? 無観客でも選手を通して世界中から変異種が持ち込まれ、日本国内が大変なことになったら、いったい誰がどう責任を取るつもりなのか。無観客かどうかの問題ではない。医師会長の発言として開催を容認することに疑問を感じる」
「現実的には中止でしょうけど、最低でも無観客開催ですよね。この現状で世界から観客を入れるっていうのは正気の沙汰ではありません。とはいえ、大会で感染者が出たら、その人達を入院・手当てする余裕は一切ないから、やはり中止が現実的だとは思います」
「『すべての選手が東京に来ることを望んでいる』。本当にそうなの。安全が担保されれば、の話でしょ。選手たちの事を本気で考えているのであれば、中止するなら早めに決断したほうがよいとは思いますよ」

   また、無観客開催の場合を想像して、呆れる人も多かった。

「この状況があまり変わらないと仮定したうえで、無観客のオリンピックが開催された場合を想像してみる。某国の何々選手がメダル獲得というニュースと同時に、何々選手の感染が発覚、入院、チーム全員が競技辞退というニュースが流れてくる。また、選手団のクラスターが起こり、隔離や入院、出入国に関するニュースも流れ、開催国の責任を問う海外メディアの厳しい目に晒される。こんな状況のスポーツ大会って誰が楽しいのかな?」
「無観客なら東京でやる必要がない。閑散とした地方の競技場でやったらいい。その方が感染のリスクが少ないよ。そんな無観客での強行ならオリンピックに価値はないよ。やらないほうがマシだと思いますけど」

(福田和郎)

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