2024年 4月 25日 (木)

【2021年の市場展望】都心の「コンパクトマンション」人気が上昇!? そのワケは......(中山登志朗)

注意!想定よりも多額の住宅ローンを組んでしまうことも...

   ご存知の方も多いと思いますが、この面積要件は登記簿上の面積、つまり専有部分の壁の内側を測った内法(うちのり)面積であり、対してマンションの間取図で採用されている面積表記は壁芯(かべしん)面積で、壁や柱の中心部を基準として計測した面積ですから(その差はおおむね5%程度といわれています)、2021年度から住宅ローン控除を受けるには少なくとも間取図上で42平方メートル以上、物件によっては44平方メートル程度の壁芯面積が必要となります。「お得」であるはずの住宅ローン控除を受けるために、想定よりもグロス価格の高い物件を購入しようとする可能性があると指摘されるゆえんです。

   住宅ローン控除は元本の上限が4000万円に固定(長期優良住宅は5000万円上限ですが面積要件は55平方メートル以上)されているため、13年間の控除総額は最大で約480万円(10年間は元本の1%+11~13年目は合計2%相当で計算)ですが、都心の30平方メートル台と40平方メートル台のマンションの価格を比較すると、同一物件でそれ以上の価格差があるものも数多くあります。最大で480万円の控除を受けるために、500万円以上高額な物件を購入するという本末転倒な結果をもたらしてしまう可能性があるのです。

   金融機関の住宅ローン担当者に話を聞くと、低金利を受けて毎月の家賃より安価な返済で物件が購入できると30平方メートル超の物件を予算ギリギリで買おうとする購入希望者(主に若年者層)は比較的多いそうですが、住宅ローン金利が低い分、審査は厳格に実施しているとのことですから、超低金利だし、住宅ローン減税が13年間も受けられる物件を購入するほうがトータルでお得ですよ、という誘導には事前にバジェットとインカムの確認が必須です。

   このように考えると、制度設計が変更されたからといって、マンション・デベロッパーは40平方メートル台の(住宅ローン控除対象となる)住戸の供給をいたずらに増やすべきではないでしょうし、流通においてもやや予算的に厳しい購入希望者に住宅ローン控除を目的として物件をアテンドすることには注意が必要です。

   住宅を購入してもらう人には、新築でも中古でも新たに暮らす家で幸せに、そして快適に住んでもらうのが一番と考えれば、お節介と思われても経済的に無理をさせるのは避けたいものです。

   2021年4月から、住宅ローン控除の対象に40平方メートル台の物件も入りました、という事実は大半の購入希望者にとっては歓迎すべき情報ですが、それを伝える際には内法と壁芯の違いについて、そして物件の価格差についても説明することをお忘れなく。

   でも、4月以降はコンパクトマンションに注目! なんていう記事や情報が目立つようになるんでしょうね。(中山登志朗)

中山 登志朗(なかやま・としあき)
中山 登志朗(なかやま・としあき)
LIFULL HOME’S総研 副所長・チーフアナリスト
出版社を経て、不動産調査会社で不動産マーケットの調査・分析を担当。不動産市況分析の専門家として、テレビや新聞・雑誌、ウェブサイトなどで、コメントの提供や出演、寄稿するほか、不動産市況セミナーなどで数多く講演している。
2014年9月から現職。国土交通省、経済産業省、東京都ほかの審議会委員などを歴任する。
主な著書に「住宅購入のための資産価値ハンドブック」(ダイヤモンド社)、「沿線格差~首都圏鉄道路線の知られざる通信簿」(SB新書)などがある。
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