2024年 4月 19日 (金)

上司も部下も全員「さん」づけで呼ぼう! 運動を進める東レ経営研究所社長の高林和明サンに聞く

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「〇〇部長」がある日、「〇〇嘱託」と呼ばれる

――「さんづけ」を徹底するようになってから社内の雰囲気が変わりましたか。何かメリットが生まれましたか。

高林さん「呼び方を変えただけで、すごく変わったということはないし、そこまでは期待していません。会社はそんなに単純なものではありません。あくまで働き方改革の第一歩です。ただ、うちの会社は全員がプロフェッショナルです。そういう人たちを社長が軍隊のように上から管理・監視するスタイルはふさわしくない。
少しずつでもいいから雰囲気が変わって、社長を殿上人みたいに思わず、もっと色々なことを言いやすくして、彼らの持っているパワーとモチベーションを最大限に上げるのが僕の仕事です。意図的に呼び方を変えることで、どう変わっていくのか。ある意味、実験だと思っています」

――なるほど。「さん」で呼び合うことが会社のスタイルにあうということですね。ところで、「さんづけ運動」を三友新聞に発表したとき、東レグループ内では何か反応がありましたか。

高林さん「何人かの女性社員から『そうですよね~』と共感の声がありました。今まで『〇〇部長』と肩書で呼んでいたのに、ある日、嘱託になってしまったら『〇〇嘱託』と呼ばなければならないのは変ですよね~と。一理あると思いました(笑)。男性から特に反応がなかったのは、男社会のピラミッド構造を表していると思いました」
お互いに「さん」づけで呼ぶと距離が縮まる
お互いに「さん」づけで呼ぶと距離が縮まる

――「さんづけ運動」を他の会社にも広めるべきだと思いますか。その場合、どんなアドバイスを送りますか。

高林さん「いいなあと思うところがやればよいし、やりたくなければやらなくてもいい。押しつけるつもりはまったくありません。その会社に合った社員のパフォーマンスを引き上げるスタイルがあるはずです。たとえば、数千人の製造現場の工場があって、三交代で勤務している。工場長以下、命令系統がはっきりした職層があるところで、工場長を〇〇さんと呼ぶのはおかしいと思います。私がそんなところのトップになったら、さんづけでは呼ばせません。
また、当社は少人数(25人)で、平均年齢が50歳前後と高いことも、お互いに『さんづけ』で呼びやすくなっている理由だと思います。20歳をちょっと超えた新入社員が、いきなり社長を『〇〇さん』と呼ぶのは、本人も抵抗があると思いますよ」

――欧米では、ファーストネームで呼び合うのが一般的ですが、社員から「カズアキ」と呼ばれるのはどうですか?

高林さん「いや、それは絶対ダメ(笑)。日本人の文化に合わない」

――日本人はお互いに呼び方に困ることが多いですよね。妻は夫を「あなた」と呼びますが、夫が妻を呼ぶ上手な言い方がないから、「おい」「キミ」「ちょっと」「ママ」などと呼んでしまう。英語では「ハニー」とか「スウィーティー」という親しい呼び方があります。
また、家族の中でも目上の人には「お父さん」「お母さん」「お兄ちゃん」「お姉ちゃん」という呼び方があるのに、目下の「息子」「娘」「弟」「妹」には呼び方がないから「〇〇」と名前で呼ぶしかありません。

高林さん「確かにそうです。英語では、息子や弟を『マイ・サン』とか『ブラザー』と呼びますよね。海外から日本に帰ってきた駐在員の奥さんたちが、学校のママ友たちとの付き合いに怒っていますよ。旦那のことを『主人』というのがヘンだと。それとお互いに『〇〇チャンのママ』と呼び合っている。なぜ自分のことを名前で呼んでくれないのか、自分というものがないの!と不思議がっています」

――やはり、名前で親しく呼び合うべきですよね。

高林さん「世界的にも、会社の中の権力格差がなくなっていくのが潮流になっています。会社内でも若い人や女性の意識がそうなっている。それに年寄りがついていけなくなっています。先日の東京五輪組織委員会の森サンの発言なんかそうかな。
今、30歳になっている息子が中学生の時、『生徒会の役員が女子ばかりだから、副会長に立候補してくれ』と頼まれたと聞き、死ぬほど驚きました(笑)。会長じゃなくて副会長ですよ! 今、全国の学校の生徒会は女子が頑張っているのでしょうね。そういう女性がどんどん会社に入ってきています。会社も変わらなくてはいけません」

(福田和郎)


プロフィール
髙林 和明(たかばやし・かずあき)
株式会社東レ経営研究所代表取締役社長
1980年京都大学教育学部卒業。同年東レ株式会社に入社。フィルム事業を歩み、2003年10月からマーケティング企画に従事。2017年6月から東レタイ代表を務め、2020年12月から現職。

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